第94話力を抜くこと

 文章を書くときには、上手く力を抜くことが大事なのだという。


 小説の書き方を解説したサイトにそう載っていた。

 全文に力を入れるのではなく、あまり重要でない部分はさらりとした表現で済ませる。

 そして、読ませたい部分にはしっかりと凝った表現を使うのが良いのだという。


 なるほど、と僕は頷いた。

「読ませどころ」を決めて、そこに集中して力を入れればいいのか。

 その方が、全体にもメリハリがついて読みやすくなるだろう。


 そう言えば、作曲をしていたときにも同じようなアドバイスをもらったことがある。


 二十歳くらいの頃、僕は音符を詰め込みまくってゴチャゴチャした曲を作っていた。

 右からも左からもシンセサイザーの音が鳴り、テンポが速く、ドラムが絶えずシンバルを鳴らすような曲だ。

 当然、全く評価されなかった。


「詰め込みすぎ。もっと休むところは休んだ方がいい」


 よくそんなアドバイスを頂いたものだ。

 今になってみれば、この意見は正しかった。

 だが、音楽的素養のない当時の僕にはさっぱり意味が分からなかった。


 僕は作曲をやめてしまって、今は小説を書きたいと思っている。

 小説でもまた「力を抜くべき」というアドバイスを目にするとは、少し驚きだ。

 どんなジャンルでも脱力は大事だということか。


 また作曲のときと同じ過ちを繰り返さぬよう、力を抜くことを意識して書いていこう。

 そうだ、このエッセイを書くときと同じくらい、小説も脱力して書けばいいのだ。

 ……いや、それはさすがに怠けすぎか。


 バランスって難しいですね。

 では、また。

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