第92話ノスタルジー

 現在人気のライトノベルに「ぼくたちのリメイク」という作品がある。


 28歳の主人公が10年前にタイムスリップし、大学時代をやり直すという話だ。

 主人公は仲間たちと切磋琢磨し、クリエイターになる夢を追いかける。


 僕はこの作品のファンなのだが……読んでいて、痛みを感じるときもある。

 大人になってしまった僕にとって、夢を追いかける若者の姿は眩しすぎるのだ。


 作中では当時のネット文化などを中心に、10年前の雰囲気が巧みに表現されている。


 10年前といえば、僕自身も学生だった。

 将来に悩みながらも、ネットにどっぷり浸かって楽しんでいた頃である。

 その頃の懐かしさも相まって、この作品を読むと僕の心はそわそわと落ち着かなくなる。


 楽しかった思い出もあれば、あの時にこうしていれば、という後悔もたくさんある。

 色々な気持ちが蘇り、胸が締め付けられるように苦しい。


 ノスタルジーというヤツは、時に劇薬だ。


 僕もこの作品の主人公のように、過去に戻ってやり直したい。

 読んでいる最中に何度もそう思った。

 好きな作品だからこそ、感情移入しすぎてしまう。


 苦しい……。

 どうしてたった一冊の本が、僕をここまで苦しめるんだ……。


 そう感じつつも、僕は不思議とこのシリーズを読み続けてしまっている。

 作品にどうしようもなく惹かれてしまっては、読まざるを得ない。

 僕の負けである。


「ぼくたちのリメイク」は感情を揺さぶってくれる魅力的な作品だ。

 未読の方にはぜひ読んでいただきたい。

 過去に未練があって、ノスタルジーに悶えたい人には特にオススメだ。


 では、また。

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