第91話義務感

 義務感というヤツや厄介なものだ。


 面白いことでも「やらなければいけない」と思うと、途端にやる気は失せていく。

 文章を書いていても、義務感に支配されそうになることがある。


 エッセイを毎日投稿していると、なんだか毎日書かなければいけない気がしてくる。

 小説を書き始めたら、完結させるまでは続けなければならない気がしてくる。

 別に誰かに命令されているわけでもないのに「ああ、書かなきゃなあ……」と、少し憂鬱な気分になるのだ。


 文章を書くことは義務ではなく、権利だ。


 それは分かっているのだが、僕は誰かに小説を書かされている。

 では、誰に書かされているのか……。

 それは恐らく「この物語を書きたい」と意気込んでいた過去の自分に、なのだろう。

 モチベーションを保つことは本当に難しい。


 今は小説を書きたくないなあと思ったとき、僕はそばに置いてあるギターを手に取る。

 何かを書きたくなるまで、淡々とギターを弾く。

 義務感に襲われると、別のことがやりたくなるものだ。

 テスト前に部屋の掃除をしたくなる、例の現象である。


 小説の執筆はあまり進んでいないけれど、ギターはどんどん上達している。

 僕が望んでいるのは小説の上達なんだけどな……。

 そんなことを思いつつも、今日もギターを弾く。


 六本の弦でボヨヨーンと間抜けな音を響かせながら考える。

 文章を書くことが義務でなく権利であるならば、完成させる期限も存在しないはずだよなあ、と。


 少しずつでもいいので書き進めていって、のんびり小説を完成させればいい。

 楽器の小説も、ちょっとずつしか上達しないのは同じである。


 まあ、まったりと行きましょう、ってことだ。

 それでは、また。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る