第23話 ユーダの修学旅行 ウィズ狛犬
中学時代のユーダの修学旅行は定番で鉄板の、奈良、京都が行先だった。
候補地に直前まで南方の島が(ハワイではない)上がっていたので、
木霊に会えるかもよと(トトロかい 笑)話をしていたのだが、
結局、テッパンの観光地に決定した。
説明会で先生方に、ユーダの先輩たちの数々の珍エピソードを腹いっぱい
聞かされた身としては、ひじょーに心配していた。
案の定……規則違反をした同級生が先生方の逆鱗に触れるという事態が
起こった。
知っていながら通報しなかったという咎でユーダも叱られた。
言った方がいいかなと思ったのだが他の男子が庇ったため、黙っている
ことにしたのだそうだ。
関係する同じ班の生徒たち数人を前に、先生たちはめちゃくちゃ怒った。
責任者の先生は意外にさっぱりと切り上げてくれたのだが、他の先生方が
時間差でお説教を垂れたらしい。
「おいしかった夕食の味も楽しかった観光の思い出も吹っ飛んだ」と、ユーダ。
ユーダは人や場のエネルギーに影響を受けやすい。
特に負のエネルギーの充満する場は苦手である。
がっぷりと受け止めてしまい、荒ぶる怒りの矛先を求めて、心の中で
おどろおどろしい妄想を繰り広げる状態になってしまう。
ところで、最近ユーダのそばに龍の「アーガイル」というのがついている
のだが、(龍次郎の消息については後日。)
彼もまた、ユーダや前についていた龍次郎のように負のエネルギーや波動の
低い場所に弱い。
仕方がないので、巻き込まれておかしくなる前にと、早々にユーダのもとを
一旦離れる判断をした。
アーガイルは離れる前にある存在に頼みごとをしていったようだ。それで……
長いお説教が終わった後、就寝時間になってもどうにも眠れないユーダが
トイレに入っていたとき。
ユーダにしか見えない白い子犬が一匹あらわれた。
全体が薄いモノクロームの映像のようで、影の部分が灰色に見える。
目だけが黒々とはっきり丸い点になっていた。狛犬様の赤ちゃんである。
高く可愛らしい声でこう言う。
「たのまれたから、たべにきたよ! 」
そうして、ユーダの心中に滾っていた諸々の悪感情をきれいに食べてくれたそう
である。(まずかったろうと思うが)
おかげで、ユーダは先生に反抗したりもせず、クラスメイトに八つ当たりも
せず、無事に乗り切ることが出来た。
ちなみに違反をした子は友達思いのいい奴だったので、同級生たちは彼を
全く責めなかった。むしろ怒りを長々垂れ流した教師たちの方に憤っていた
そうな。
先生方の長時間に渡るご指導は全く逆効果であったということか。
もしも、愛のある指導だったなら、いくら短気なユーダでも狛犬様のお手を、
というかお口を煩わせなくとも、感情をコントロールできたと思うのだけど。
生徒たちも悪いのだろうが、効果ある叱り方の研究を是非お願いしたいものである。
他に、何かなかったか尋ねると、
名所旧跡巡りをしている最中に、声が聞こえたという。
はるか遠くから、深みのある低い声で、たった一言。
「どぉうもぉ」
「どうも」と返して、はたと思った。誰だろう?
アーガイルによると、京の町の警護の任務についている「青龍」であろうということ
だった。よく、朱雀、白虎、玄武と一緒にあげられる四神の青龍である。ユーダは龍に縁があるので、向こうも気づいたのかな。
「他の存在には出会わなかったよ」
そうだろうね。ユーダが修学旅行に行ったのは十月。
旧暦じゃないし色々時期はズレるかもしれないけど、世にいう神無月。
八百万の神様が出雲に集まる月だもの。
皆、向こうへ行っていたんだろう。
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