第19話 魔ハンターSAKAGAKI氏

 窓の外の夕焼けが美しい。

いつもはもっと遅めに皆で夕食を採るのだが、その日はなぜか早く、

まだ夕方だった。

ユーダと二人だけで食事をしていると、「窓の外に誰がいる」とユーダ。

ここ、一軒家じゃないんだけど(笑)地上4、5メートルくらいあるんだけど!


「あれ、この人、前にあったことがある」


疫病神様と何か打ち合わせをしている姿を見たことがあるという。

ごく普通の大人の男性で、ポケットのたくさんついたベストを着た、

フィールドワークをする学者さんのような恰好に虫かごを斜め掛けしている。


 彼は突然「魔」というものの存在について語り始めた。

一通り語ると、こちらから聞く前にきちんと名乗った。端正な感じ。

「サカガキ ケイと申します」

その「魔」と呼ばれる存在を捕まえて天界へ連れて行って始末する。

言わば「魔ハンター」である。

漢字はわからないが、坂垣桂じゃないかなあと思う。


大変失礼なのだが、食事を続けながら話を聞かせてもらった。ユーダは

しゃべるのと食べるの両方になり、忙しい。


彼は魔を捕まえて、虫かご(笑)がいっぱいになったら、上に連れて行って

空にして還って来る。

夕暮れのことを逢魔が時と呼んだりするけれど、今ぐらいの時間に今夜出没

するところを物色したりすることが多いということで、魔ハンターたちも

出動するらしい。

人にとり憑いて、暴力事件を起こさせたり、悪さをするのを防ぐ目的もある。


 彼の言う魔は妖怪、幽霊とは別の範疇の存在な感じだね。悪魔とも違う。

人々のマイナスの念波が凝り固まって出来た存在のようだ。嫉妬、恨み、怒り。

世の中が乱れると当然、そういう存在も増えるだろうねえ。ここは予想だけど。

魔は都会の闇の中の方が多いけれど、人の少ない田舎も強力なのが潜んでいた

りするようだ。


人手が足りないので、ハンター志望者を募集していると言っていた。

特に魔法系の呪文が使える方がいたら、歓迎するそうだ。

書いていたブログに載せていいかと尋ねると、OKをくれた。

「おかしなリクルートだと思われないかな、」と心配して下さっていたが、

もともとおかしなブログなので、大丈夫だと思います。


ちなみにハンターは、あちらの世界の方限定です。それと、こちらに

連絡をしてこられても何も対応出来ませんので、直接「サカガキ ケイ」

さんにお願いいたします。

って、どうやって連絡とるのか知らないけれども。

魔ハンターなんだし、警察とか、自警団的な意味合いのある組織だろうから、

厳しい選考があるかも。


 ……そして、その夜遅く。

「また、サカガキさんが来てる。」とユーダ。

「あら、こんな遅くまで。お仕事ご苦労様ねえ!」と私が応えると、

「違う。仕事帰りに飲んでたみたいだよ。」という(笑)

見えない世界にはバーもあるのか?

いや、聞くところによると、こちらの世界のお店に立ち寄られるそうだ。

マスターは全く気付いていないけどちゃんとお代も支払って、飲み物の

気だけを召し上がるらしい。


「見える」人間が運の良い時には、仕事帰りの魔ハンターが寛いでいる

様子を目撃できるかもしれない。



 続きます。

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