第16話 ステルス用心棒 松太夫氏

ユーダの周りには一体何人のサポーターがいるんだろう。

「新しい仲間が現れたよ。」

夜遅く、塾から帰ってくるなり、ユーダがそうまくしたてた。


新しく判明した存在は不思議そうに言ったそうだ。

「ほう、私が見えるようになったのか?」

後からその言葉の意味がわかった。


 緑色の羽織を着た、お武家さまである。

松太夫正むら(マツダユウ マサムラ)と名乗った。むらの字は

ユーダの記憶になく、変換できない。部首とか説明したらと言ったが、

答えられず。どうも、又パラレルワールドの匂いがするね。

違う世界のお武家さまだろうか。

戦国時代の終わりごろの生まれと言っていた。


 彼はユーダのガイドではない。警護の者だそうである。

松太夫氏の警護の仕方は一風変わっている。

自分の波動を下げて存在をわかりにくくする。そして、対象に近づいて

成敗するというものである。やっぱ、刀を使うんだね。


返り血を浴びたりするので、知らず知らずのうちに波動が低くなって

しまうという部分もあるらしいが、波動が低くても、内面の志の高さは

変わらず存在する。

そのへんが、松太夫氏の特殊能力だそうだ。


潜水艇かステルス戦闘機か。いいや、隠密同心(古い)か。

「生前はあまり腕は良くなかったのだが、こちらに来てから精進致した。」

わかりますよ。見えないし、聞こえないけど。

百年かけて編み出した技のおかげで、今では曲者をみね打ちで捉える

ことが出来る。

どうすれば、相手がどのくらい弱るかが瞬時にわかるそうである。


以前、何でか繋がり方が良かった日に、江戸時代の武士の豆知識を

教えてくれたりしたっけ。


 ところで、松太夫氏が見えるようになったということは、ユーダの波動が

下がっているということである。

ちなみに直結のガイドの声は聞こえるが、せつさんたちの声の姿もわからない

状態になっている。

下がった理由は、ゲームのやりすぎと、やっぱり学校そのものの波動の低さ

のせいである。でもねえ、学校は行かなきゃだし。


ユーダとしても思うところがあったのだろう。自分からゲームをセーブ

し始めた。

というか、自力でいきなり・・・壊した 笑。


 しばらく、波動を上げることに気を付けて、(変なのが寄ってくるので)

生活をしていると、すこしずつ以前の状態に戻ってきたらしい。


ユーダの波動が上がると、松太夫氏の姿は見えなくなる。

消えてしまう直前、彼は「さらばでござる」と笑った。

そうして、緑色の羽織のお武家さまはまた、人知れぬ任務に戻って行った……




追記

その後。

長期間ゲーム無しで生活するのも、気分転換が出来なかったり、色々

不便だということで、ユーダは祖父のアイパッドを借りて時々遊んでいた。

しかし、あの、アイパッドという奴は色々とあまりよろしくない。

結局、中古のDSを買ってしまった。もちろん、私はお金は出さない。

お年玉貯金を使わせた 笑。

今度は自分でコントロールしなさいね、ユーダ。



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