第14話 山菜ソムリエせつさん①せつさん現る

 偽ヒーローこと「力の魔神」を封印した直後のこと。

「あーさんざん荒してくれて」とドラコが言っているらしいが、私には

いつもと同じ部屋にしか見えなかった。(ドラコ、いつ戻ってきたのよ。)


そして、力を貸したユーダは実は背中の辺りにけがをしていた。

見ただけではわからないけど、「穴が開いてるぞ。大丈夫か」

とドラコが心配している。霊的な体に開いていたようだ。


 その時、彼女が現れたのである。最初、日本人の名字を名乗ったらしいが、

ユーダも私もそれをすっかり忘れてしまい、どうやっても思い出せなかった。

何か意味があるのだろう。それで、下の名前「せつ」さん(仮名)とだけ

呼んでいる。

彼女は見えない世界で薬草を調合し、背中の傷に塗って治療をしてくれた。

それから、「せつ」さんはおしかけ家政婦として家にずっといるように

なった。


普通の霊のようなので、私も心配して色々詮索し、一度はせつさんを

もう少しで泣かせるところだったが、このお人、明るくて素直なお人柄で

人好きがする。

また、うちはどうも変なものが入ってこないように結界がはられている

らしく、そこへ入れるのなら波動も低くないのだろうということで、

とりあえずそのままにしておいた。


 プロの料理人だったらしく、異次元の世界の「総本山」と呼ばれるその道の

道場で学ぶのが夢らしい。山菜料理のエキスパートで、昔は「山菜おばさん」

と呼ばれたそうだ。


明治後期ぐらいに生きた人間で、ジバなんとかというアニメのキャラクターを

「あの赤いネコのお人形ですかあ」と言ったりする。


また、コンビニのオニギリを見てユーダの味覚の記憶を辿り、「こ、これは

何ですか?本当に食べ物なんですか?!」と驚いている。どうも、味と薬

だらけの材料表示に驚愕したらしい。よくわかるよ。


でも、台所用品の進化には感動したらしく。特に、レトルトパックには喜んで

いた。

また、フリージング技術も感激し、「いつでも山菜が使える」と言っていた。


 一緒にバスに乗ると、「お金も払わないでバスに乗せていただいて」と感激

している。

払おうにもそもそも姿が見えないから、こっちが変な人扱いされちゃうよ。


一度、ユーダと一緒にゲームソフトのお店に行き、店内に貼ってある新しい

ゲームのポスターのキャラクターを見て、「この女の子は私に似ていますね」と

ご満悦だったそうで、何かいちいち可愛らしい。


 家族旅行で牧場をテーマにしたアミューズメントパークへ行った時も、見えない

世界の御一行様一同がついてきた。


新鮮な牛乳が手に入るとあって、せつさんは早速予約をしたらしい。その数50本!

保存場所も確保したらしい。いいよね。あちらの世界は運ぶのも保存するのも

簡単そうだ。

練乳をつくるという。新鮮なミルクでつくりたての練乳。食べたい。


先日はテレビで山菜の豊富な山野の紹介をしていて、せつさんはメモをしていた。

「ながの、けん・・・」

しばらくして、行ったかどうか尋ねると山菜を採ってきたという。

「3トンほど。」 何年分だよ!!

「はげ山になったんじゃないの?」

「オーラをもらうだけなので、二日もすると回復します。」なるほど。


 彼女が来てからおやつも出るようになったらしく、きんつば、どら焼き、

シフォンケーキとメニューも色々だ。


ユーダが実況中継する。白龍(ガイドの他にもうちには色々いる。龍が警備に

ついている。)がにゅーっと和室から顔をだす。

「大皿に盛ったクッキーを食べてる。おいしい?『うん、おいしい』って。」


ちなみにいくら食べてみたくても、私とユーダは口にすることが出来ない。

「こちらに来られてからどうぞ。」と言われてしまう。

簡単に行くわけにはいかないんだよねえ。


ある時などはユーダを朝早く起こすために一役買ってくれた。ほどよく不思議な

夢をみせて、びっくりさせて目を覚まさせると言うウラワザである。


実は彼女がユーダの扱いになれているのには理由があった。

・・・続きます。



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