第13話  シルフィーはがんばり屋さん

 ヒーローが偽物であるとわかった後に、おそらく代役としてやって

きた妖精のガイドのお話。


ブルーの服を着た羽根のある存在である。

大きさは……ユーダは手近なDVDのリモコンを手にとって、

「これの一本と半分くらいかなあ」と言う。

白い肌で、黒い瞳。ロシア人と日本人のハーフみたいな見た目だそうな。


小さいので、「見習いかなあ。」とユーダがひそかに考えたら、

「見習いはあなたでしょ!」と返ってきた。手ごわい方だ。


名前を名乗ったのだが、ユーダが聞き取ることができず、私と二人で色々

推測した挙句、一番近い語感の「シルフィー」と呼ぶことにした。

この人は妖精なので、当時魔界だった学校への付き添いも平気だった。


 当時まだユーダのそばにいた紳士(その後どうしたのかは不明である。)

がこっそり教えてくれた。

「あの人はもともと自然の存在なので、種族として寿命の短い普通の人間

には興味がないんですよ。

あなたに関わるのは、あなたが特殊な人間だから面白いんでしょう。」


自然の精霊ということで、きっといや、絶対本名は、シルフィード

(風の精)である。

彼女たちの寿命は永遠。アンデルセンの人魚姫の最後に出てくる空気の

精は、魂はなくて三百年だったけどね。


そういえば、最近ユーダは別の存在とコンタクトをする機会があった

らしいが、シルフィーのことをいずれ妖精団を一つ束ねるようになる

くらいの実力があると言っていた。

ガイドにくることが不思議なくらいらしい。


 ドラコが戻ってきて担当を外れてからも、ユーダには時々シルフィーの

声が聞こえる。

異次元の世界というのは普段まったく姿を見せなくても、私たちの話題に

のぼるだけで、素早いレスポンスがある。ケータイのようなものだろうか。


ある時、自分の話になったら、通信があった。

「私、これでも第一級力仕事引き受け人なんだよ。」

龍のドラコに言わせると、「剛腕」らしい。

DVDリモコン一本半分のサイズの、羽のある美少女が剛腕……

魔神の中でも強いと言われている「力の魔神」(つまり偽ヒーロー)より

も力が強いとか。

ま、自然の力にはかなわないという事かもしれない。


最初に姿を現した時に青い服を着ていたのは、水の精のお仕事を手伝って

いたからだという。

木の精のお手伝いをしているときは、葉っぱのような服を着るらしく、

「キャベツじゃないよ!」と先に釘を刺された。

私には見えないが、アニメ「やさいのようせい」のレタスちゃんの

ドレスのようなイメージである。

よく大風で木の枝が折れたりしているが、ああいう伐採もお仕事のうち

だ。「剣で木々をバッサバッサと切り倒していったこともあるそうだ。」

とドラコが言っている。


ドラコが最近見かけた時は、金属のような服を着ていたから、鍛冶屋さん

のお仕事でもやっているのかもしれないと言っていた。

ふいごの風になってあげているんだろうか?謎。


 シルフィーに関しては私にも不思議なエピがある。

ある時、仕事上で人にあっていた時、風で自動ドアが開いたことがあった。

すると、その前まで、一つでいいと言っていた注文を急に二つ欲しいと

言ってきた。

急な心変わりに妙な感じがして印象に残り、シルフィーとコンタクトを

とれる時に聞いてみた。「あれはあなたが協力してくれたの?」

応えは「へへへえ~ 笑」―おおっ。

自然の精霊は人の気持ちも変えられるようである。


 タイトルについてだが、シルフィーに自分のキャッチフレーズについて

訊いてみたら、「努力家シルフィー」だと言ったので、こちらの一存で

可愛らしく変更させてもらい、斯様なタイトルになった。


確かにこの風の精は大変な努力家で、おまけに七変化である。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る