第12話 美貌の神様
その御方はイケメンだそうだ。
ユーダが試練を乗り越えるたびにやってくるらしい。
「大変だったねえ。」と優しい言葉をかけつつ、今後のアドバイスを
くれたりする。危機を乗り越えないとあらわれない辺りがミソだ。
彼の訪問の折は、たとえ夜中でも、家じゅうの窓という窓からあふれん
ばかりの眩い光が差し込む。
アンティークの重厚な木製の(おそらくは彫刻入りの)ドアが開くような
ギイーッという音とともに現れ、いつもハープの音色がバックに流れるらしい。
ちなみにこれは決して比喩ではない。
最初の頃、PCで描いたような映像の似顔絵が送られてきた。
銀色の髪で黒っぽい瞳(銀髪碧眼と書きたくなるが、ユーダが黒っぽいというので
黒である。)の、白人風のものすごい美形だったそうで、
ユーダは内心美化してあるのかなと不届きなことを考えた。
が、後から本人に会うと寸分違わぬ御姿だったらしい。
昔、アニメオタクだった冴月の中では、その当時誕生した「美形キャラ」と
呼ばれる、女性よりも美しい主に切れ長の目の長身のキャラクター像を
イメージしてしまっている。
ユーダがお名前を尋ねると、「一部の人間にとっては厄病神の様なものだ
ろうね」ということで、「厄病神」だと名乗られた。
ちなみにこの美神の存在感は本物ヒーローを上回った。
近くにいらっしゃると見えないのに圧倒された事を覚えている。
身長は180cmくらい。これで麗しのお姿が拝見出来たらどれほどよかったろうか。悔しい。
雰囲気としては西洋の神様のようであるが、着ているものは個性的だ。
ユーダによると「夏休みの虫採りの子供が着ているような横じまのTシャツ」で、
その上、色彩は上から下に濃くなるグラデーションの黄色という、誰も着ない
ようなトップスに、下はデニムジーンズだそうである。よくわからん。
何かのご来臨の折に、私も居合わせたので、ユーダを通して再度お名前を
伺ったが、
「名乗るほどのものでもないですよ。」とやはり教えていただけなかった。
見えない世界は性別すら変えられるから、予想もしづらいようだ。
「言っちゃいけないわけがあるんだよ、きっと」とユーダ。
そうだね、少ししつこかったね。も、やめとこう。
偽ヒーローのことがあって、子供が親には見聞きできない世界に影響されるのが
心配ではあるのだ。グラウディングをしっかりしないと。親も子も。
見えない世界の常として、よくわからないものが耳に快いことを言って
近づいてきたりする(三次元でも一緒か。)
この前も「押しかけ正義の味方」が現れ、明らかにおかしな物言いに私がキレて
怒鳴って追い返した。
「間に合ってるって言いなさい!いらん。そんなもん。」
その時タイミングよくおいでになった(見てたのかもしれないけれど。)
厄病神さまが下さったのが、目に見えない存在の善悪を判断できるアイテムである。
先日の「力の魔神」こと偽ヒーローの封印にユーダが力を貸したご褒美だそうだ。
装備が着々と完成しつつある。何のゲームなんだろう(違う)。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます