第7話 神社の龍神様
自宅の近くに規模は小さいのだけど、歴史のある神社がある。
ある年の四月ごろ。ユーダが例によってジョギング兼散歩に行くようになって
からのこと。
ふと興味をひかれてその神社へお参りをした。石段を上り、ひっそりした
境内の様子を眺めていると・・・
人の声が聞こえてきた。姿はない。頭の中に浮かんできた映像はなぜか浴衣を
着た普通のお爺さん。どうも、この神社の「目に見えない宮司さん」のようだ。
挨拶をして、世間話をした。「ひょっとしたらあなたはユーダさんですか?」
と尋ねられた。
なんで知ってるの?
ユーダ曰く、「見えない存在と話ができる人間はあまりいないから。」
彼はこの辺りじゃ有名人だそうな。見えない存在限定で。
亡くなった後も、ここに残り、色んな仕事をなさっているらしい。
財布も持たないユーダに気づいたのか、「お賽銭は別にいりませんよ」的なことを
言ってくれた。
人っ子一人いない境内には開いてなかったが、お守りを売る売店があって、
お守りの値段表訂正がしてあった。
「消費税が上がるのは嫌ですね。」と彼 。
また、少し前にわが町へやってきた外国の偉い人の話をしたりしたそうだ。
で、肝心のお祀りされている御方は、ユーダの話では龍神様らしい。ユーダの力では、波動の高い御姿を拝見することは難しく、わずかにうろこの輪郭が見える程度だったという。
何も知らないユーダが突っ立っていると、龍神様はおもむろに低頭するよう命じられた。
(そうですね。神様の御前ですものね。お許しください。)
龍神様とその時何を話したかユーダはよく覚えていない。しかし、「いつでも遊びに
おいで。」と言っていただいた。もしかすると、退屈なさっているのかも。
二度目には床屋へ行こうと神社の下の道を通っていたら、「おお、来たのか」と
あちらから御声をかけていただいた。
「髪を切りに行くので通りかかったんです。」と言うと、「そうか」とおっしゃった
そうだ。
次にそこを歩いていたとき「ちょっと上がって来い。尋ねたいことがある。」と
ご命令があり、行ってみると「お前のそばについているその龍は何だ。」と訊かれた。
ヒーローについて知っているだけのことを説明すると、納得されたようである。
ちなみにわが町には、年に一度大きなお祭りの開催される、大きくて有名な神社がある。しかし、一度ユーダがお参りに(というか散歩に)行ったときにはご本尊の気配が無かった。
ヒーローが一言。「ここにはいつもはいないよ。」…はあ?
「ここは会社のようなものだから。お祭りの時は来るけど、いつもはいないんだよ。」
―ちょっと拍子抜けである。ユーダの初参りはあそこの神社でしたのに。留守なの?
近くにある小さなお社に留守番とおぼしき目に見えないお使いの方がいらっしゃって、同じようなことを言われ、「あ~お賽銭は別にいりませんよ~」と、龍神様の
神社と同じことを言っていただいた。
「だって、神様はお金は要らないものねえ。」とユーダ。
でも、維持費がいるでしょうに。
神社のお祭りがあると、地元が潤うし、古くからの信仰の対象だからね。
ただ、前から色々聞いてはいたけど、神社の見た目の大きさと実際の存在の大きさと
では開きがある場合があるんだろうなと思う。
ある時、ユーダと叔母が昔このあたりで起こった災害について話をしていた。
あの神社(龍神様の)が無事だったのは地下の駐車場に水が流れ込んでしのげたおかげだろうという推測をする。
その途端……ユーダにだけ、お声が聞こえた。
「その通りい~」
そして、脳裏に龍神様がめいっぱい体を伸ばして出てこられている姿が浮かんだ。
「あんなに神社を離れていいのか?」とヒーロー。
龍神様はおちゃめな部分もお持ちである。
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