第6話 お侍さん

ユーダは運動が苦手である。

小さい頃、近所の天然石ショップのスピリチュアルヒーラーの女性に

セッションで遠隔で見てもらった際、「体の中に魂が入りたがっていない」と言われた。さらっと言われたけど、かなり面妖なことだよ。

どうも龍やガイドが何くれと世話を焼いてくれたのは、このまま魂が体からはみ出た状態では大変だという側面もあったと推測される。

 まあ、それが原因かどうかはわからないが、ユーダはどこかいつもぎこちなく、小学校の頃は特別に施設に通って運動の訓練をするくらいだった。

現在もクラブ活動はやっていないので、体力づくりと暇つぶしのために、

時々ジョギング兼散歩に出かける。

 で、行くたびに色んな存在に会う 笑


中学一年の秋ごろのこと。

ジョギング兼散歩中に、墓地に紛れ込んでしまった。

お墓の間の、スクーターがやっと通る位の小道をテクテク歩いていると、

向こうから…


「お侍さん」がやってきた…えっ!!


「うわ!!」と同時に驚く二人。


向こうはこちらが見えているとは思ってなかったんだろう。近づいてきてユーダが

見える人間だと気づき、驚きのあまり一瞬姿を現してしまったらしい。

彼はすぐに見えなくなり、後はお話だけをしたようだ。


ユーダは顔はよく覚えていないと言っていた。時代劇に出てくるような服装をして、

頭も月代(さかやき)をきれいに剃った髷姿だったらしい。全体に身綺麗だった

のではないかと思う。裃を着て、主君のお城へ登城なさいますか?といった

風情だったようである。


お互いに相手がいることがわかったので、とりあえず挨拶した。

お侍さんはお墓を遊び場にしている子供たちをよく見かけていたようで、

「君は他の子と比べて言葉遣いが綺麗だね。」と褒めてくれたという

(妙な構図だなあ。)。

そして、迷っていると告げると、「出ていくのか。それなら、こっちの道だよ。」

と教えてくれた。


「死んでからもこの世界にいて、上に上がらなかったんだろうね。ずっと

ご主人のお墓の警護をしているんだろう。」

と言っていた。江戸時代からだとすると、百五十年以上前か。

武士のかがみだ。

それなのに、言葉遣いはすっかり現代風になっていたというから、面白い。


前にユーダは自分のガイドの龍「ヒーロー」のことを、寿命が長く(というか

無いらしい)スケールが大きいためか、「時間のない世界にいるみたい」と

言っていたが、このお侍さんもあの世に行ったせいで、時間のない世界に

いるんだろうか。


あの世のお侍さんに道を訊いて、この日ユーダは無事に家に帰り着くことが

できた。それ以来、彼には会っていないという。

私がこの記事を書いているとき、「彼が呼ばれたと思って来るかも?」なんて

尋ねてみたら、

「警護をしているんだもの。よそへは行かないよ。」と応えた。




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