第4話 チョコとお肉
実はユーダの傍らには小さな頃から龍のような目に見えない存在が
一緒にいたらしい。
私、冴月がそれを知ったのは、彼が中学生になる少し前だった。
ユーダは当たり前すぎて私に言う必要を感じなかったものと思う。
その龍のことは便宜上「ドラコ」と呼んでいる。
普段は全長30センチくらいのオレンジ色の龍の姿をしているという。
彼の物言いを翻訳するとき、ユーダは年相応に若々しい。
また、中一の9月頃から、ユーダについている見えない世界の
ボディーガードが増えている。
立春パーティーに参加していた非常勤のガイドたちとは又別の、
ユーダ専属のガイドたちだ。
他に増えたのはあと二人(人と数えていいかどうか?)
一人はとても優秀な仕事のできるリーダー格の人物である。
ずっといるわけではないが、何度もユーダをサポートしてくれて、
時には叱ってもくれる。
最初の頃は一般に言われる「ガイド」なのかどうか、心配して根堀り葉堀り
話を聞いたけれども、今は信頼して、親としては感謝している。
勿論、こういうスピ系なことはきちんとチェックをしないと危ないことに
巻き込まれそうなので、それは注意深く見守らせていただいている。
私にあまり知識も能力もないのが残念だけど。
で、その彼のことは便宜上「ヒーロー」と呼んでいる。
彼の言葉を伝えるときはユーダは低めに声を張り、キリっとなる。
別に憑依されているわけではないが、口調を真似ることで、
誰が喋っているかわかりやすくしているらしい。
後に引き継いだ別の龍から、「真似が上手いから話が早い」とおほめに預かった。
さて、季節外れだが、バレンタインの頃のこと。
当時ユーダが通っていた中学校ではバレンタインチョコは禁止だったので、
一個ももらわなかったらしい。しかも、私にもチョコじゃなくて別の
お菓子にしてくれと言っていた。
チョコレートのことについてアドバイスしてきたのは「ヒーロー」だった。
ユーダにチョコレートと肉を食べ過ぎないようにと言ってきたのである。
通常、スピ系で言われる事は、グラウディングが難しくふわふわしていたら、
チョコを食べて地に足をつけるとか、パワーがありすぎて敏感な人が
肉を食べてコントロールするとかいう話である。
しかし、ユーダの場合は違うらしい。
「見える」のがデフォルトなので、チョコや肉を食べすぎると波動が下がって、
落ち着くのではなくトラウマになるようなものが目に入るようになるのだそうだ。
見えない方がいいような波動の低いまがまがしいものが。
そうならないように、チョコと肉をできるだけ避けるようにとのことだ。
「でも君は育ちざかりだよ。タンパク質は大切だよ。」と言うと
がっつり牛肉ステーキとかじゃなければいいんじゃないかなと勝手に判断して
言っている。
二人で話し合った結果、鳥から揚げはよかろうという結論になった 笑
まあ、もともと牛肉ステーキをよく食べるような家計、もとい家庭ではないので、
気を付ければ大丈夫だろうと思う。
チョコについては本人は食べたいだろうが、別に食べなくても生きていけるので、
問題ないかな。
ユーダ自身は「板チョコはダメだけど、チョコチップクッキーやチョコパイは
いいんじゃない」とまた、ガイドと話し合って落としどころを見つけている。
結局、私のバレンタインはバームクーヘンラスクのチョコがけということになった。
ちなみに「ヒーロー」はとても位の高い龍らしい。
彼はどうやら警備組織の幹部らしく、銀色の体に警視庁みたいな感じの制服を着て、たくさんの部下を従えている映像が見えるそうだ。
本名は教えてくれないけど、普段は宇宙船らしいものの中にいるようである。
「ドラコ」をガイドとして育て、指導するために来ているような気がするそうだ。
普通なら長期に教えを乞えるような存在ではないみたいと言っている。
ユーダの例えでいうなら
「マイケルジャクソンに踊りを習うようなものだ」そうである。
「ヒーローは向こうの連盟というか組織の偉い人の子供だってよ。」
しかし、向こうというのがどこ辺りなのか、何の連盟または組織なのかは全く
分からない。
「龍なのにサラブレッドなんだよ。」と言ったのは、多分、ネタだ。
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