第2話 一つ目の布かぶり男
これもユーダが小学生の頃のエピソードである。
ある時彼が、通っていた小学校に変な化け物がいると言い出した。
当時のメモを引っ張り出してみると、外見はこんな感じ。
黒い布をかぶった一つ目の男。
大人くらいの背の高さである。
かぶっている真っ黒な布はひざまで届く長さで、
顔の部分には絵のように見える質感の一つ目があり、その下にはこちらは
本物とおぼしき口が一つ存在する。唇からは長い舌がびらびらと出ていた。
最初に見たときは体育の授業中で、運動場を走ってきたらしい。
ちなみに足は全くの素足である。
陰気な欽ちゃん走り(コメディアン萩本欽一さんの芸の一つの走り方)とでも
いった感じで、斜め方向にスキップで横走りしていたらしく、
ユーダは奇妙な走り方を真似してみせてくれた(はっきり見えているのだなと
思わせる)。
二度目は教室の中を廊下から覗いていて、こちらを見て少し笑ったという。
ユーダに自分が見えていることがわかっているのだろう。
彼がいると、学用品を落っことしたり、色々おかしくなると言って嫌がっていた。
その小学校には本館の入り口上方に大時計があって、一日のうち何回か可愛らしい
細工のお人形が明るいメロディーと共に回るという仕掛けがあったのだが、
あろうことか、その時計のすぐそばに一つ目の男が陣取っているのも目撃したそうである。
神出鬼没さが気味悪さに拍車をかける。
ユーダの身が案じられて色々考えた挙句、ある由緒あるところから頂いてきたお守りを身につけさせることにした。
それが功を奏したのかはわからないが、それと前後してその「一つ目の布被り男」
の姿は見えなくなったという。
数年後、その化け物の話をすると、ユーダはしたり顔で、「あれは忘れ物の傘の
妖怪だ。」と言った。
カラカサのお化けか。形状的にはわからなくもないけど。
そして、全体がテカっている感じだったので(そんなこと初めて聞いたぞ)
傘は傘でもビニール傘だと断言した。
ビニール傘の妖怪か、はたまた付喪神ってか?
が、どうも、この点に関しては後付けっぽく、私は納得していない 笑
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