見えない世界の備忘録~少年ユーダの不思議な日常
逢原 冴月
第1話 ぼく、鳥を見ました
私の息子ユーダが不思議なものを見たと最初に言い出したのは、小学三年生の時だった。
リビングでTVを見ていたとき、彼のお気に入りの曲がかかったので、声をかけようとしたら、
ユーダは隣の部屋の窓の方向を眺め、かたまっていた。
その時は何も言わなかったんだけど、あとから、「和室の裏の窓に、大きな鳥がみえた。スーッと飛んでいった。」と教えてくれた。
切れ切れに説明するのを継ぎ合せると、赤と緑色をしていて、1メートルくらいの大きさ(!)で、
車が徐行するくらいの速度で窓の外を横切って行ったそうな。
頭に触覚のようなものがあり、そのうち「賞状」に印刷してある鳳凰に似ていると言い出した。
そういえば似たようなことが前にもあった。
ユーダが小学校に上がる前、外で二人でタクシーに乗ろうとしていたときのこと。
彼はタクシーのテールライトの部分をガン見していた。
やがてスーッと首を回し、何かを見送るような様子になった。何度も名前を呼んだのだが気づいた風でもない。
急いで手を引いて、タクシーに乗り、そのまま出発したのだが、後から彼は言った。
「だって、車のおしりのところに青い鳥がいたんだよ。
見ていたら頭を右左に振ってから、飛んでいった。ずっと見てたのに、途中で消えちゃった。」
鳥?私には何も見えなかったよ。
でも、嘘だとは思えなかった。もしユーダのあの仕草がお芝居だったとしたら、アカデミー賞ものだ。
私たちは私たちの周りの世界について本当はあまり知らないんだと思う。
「無知の知」っていうけど、世の中には我々の知らないことがたくさんあるのではないかと思うと、
荒唐無稽なことを見聞きしても「そんなことあり得ない」と簡単に言えなかったりする。
まあ、その時はなんてことないと思ったのよ。青い鳥、鳳凰なんて、縁起がいいなあってなくらいで。
私ももともと不思議なことを割りに好きな性格なもので。
小さい頃、妖精に会いたくてクラスメイトから聞いた怪しげな方法をやってみてダメだったこととかあるし。
まさか、それが始まりに過ぎなかったなんて、思いもしなかったものだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます