LASTArk past at justice 3

ギルド本部の隣にはまたひとつ別の建物がたっている。小規模な模擬試合場だ。ギルドメンバーに限らず許可を取れば誰でも使用が可能である。たまに、この辺りに拠点を置く傭兵団の隊員がたまにやって来たりもする。

その模擬試合場で朝から撃ち合う二人がいた。

「はぁ…はぁ……ちょっと、休憩しよ……」

練習用の木製の剣を杖のようについて切れた息でグリークは言った。

「えー?もう?」

手合わせの相手であるボルディーは剣を振り回しながら言った。

「あー……疲れた……」

グリークは模造刀を投げ出し大の字に寝転がる。埃が服に付くことなどお構いなしだ。

グリークは昨日、ボルディーが久しぶりにギルドに顔を出したので早速手合わせを申し込まれたのだった。

手合わせはいいものの朝っぱらからあれだけ動ける彼女の力には相変わらず驚かせられる。

「体力落ちたんじゃない?」

ボルディーは寝転がるグリークの顔をそう言いながら覗きこんだ。

「そうだなぁ……オブディーによると人って28歳くらいから体って衰えて来るらしいから、俺もそろそろか……」

グリークは今ちょうど28歳だった。その後に「あと、朝早すぎるのもあるかも」と、付け加えた。

正直グリークは朝は苦手だった。

「ところでボル。君は今いくつなの?」

グリークとボルディーの付き合いは長く、そのためグリークはボルディーのことを「ボル」と呼んでいる。

長い付き合いなのに彼女の顔からは年齢が読めないままだった。

「淑女にそんなこと聞いちゃダメだよ」

尋ねても毎回こう笑いながら返されるだけだった。もしかしたらグリークより上かもしれない。

ふと、横を見ると折れた模造刀が目に入る。

実は最初の一試合目でボルディーは模造刀を一本ダメにしてしまったのだった。彼女が普段使っている武器は特注の大型の鉈だ。

一方、この模造刀は一般的に剣と呼ばれるベーシックタイプ。これを普段の鉈の容量で振るったら模造刀が耐えきれず完全に根本からポッキリと折れてしまったのだった。

あとで処分しておこうとグリークは思った。

「グリーク最近調子どう?」

またボルディーが尋ねた。

「相変わらずモンスター討伐件数は増え続けてるよ。おまけに犯罪件数も…」

グリークが体を起こしながら言った。

「ああ、昨日のあいつらなようなヤツが増えてんのね」

「まあ、俺らモンスター対処班の方にもあんなのが回ってくるくらい増えてるんだろうな………規模はそんなに大きくないけど」

昨日は無事にあの山賊グループを取り締まることができた。

できたといっても、主犯の男はモンスターにより惨たらしい死骸に、その他メンバーのうち二人も同じような状態だった。

なんとか生き残った二人のうち一人はユースに右手を切り落とされた。(その後、グリークが魔法で治療し一応はくっつけた)

残ったメンバーに聴取すると犯行を認め、メンバーもあれだけと証言した。

町ではこれくらいの規模の犯罪グループが増加しているらしい。

「まあ、最も俺は人よりもモンスターのほうが恐ろしいけどなぁ」

何度もモンスターに無惨に殺された人を見てきたからこそグリークはそう感じていた。

「なかなか大変そうだね」

「ボルこそ今大変だろ?」

グリークがボルディーに言った。彼女は困った笑みを作った。

「そうだよ、隣国との小競合いが激化してるんだよ。………まあ、もう少しで落ち着きそうなんだけど」

ボルディーの本職はこの国の軍人だ。結構前線で戦うことが多いらしく小競合いが激化している今は一番忙しい時なのだ。

「どれくらいいれるの?」

「うーん…一週間かそれより短いか……急に呼ばれることもあるだろうし」

そんな忙しいときにでも合間を縫って来てくれた。

「ユース君が来たからあまり無理しなくていいよ。あの子、頑張ってくれてるし」

以前はボルディーが抜けると四人。さらにノアが抜けるとなると3人になっていた。

今はユースがいるのでそれなりに安定はしている。

「けどだいぶ無理をする子なんでしょ?」

「まあ……その辺がたまにきずなんだけど…」

グリークは困ったように笑った。もうすでに前科がついてしまっている。

「昔の君みたいだね」

ボルディーが笑って言った。

「ほんとそうだな……あの頃はとにかくがむしゃらに進んでいったからなぁ」

グリークが昔を思い出すかのように言った。

ユースも昔の自分と同じように今はとにかくがむしゃらに進んでいく時期なのだろう。グリークはそう考えていた。彼自身もだいぶ無茶苦茶だった。

「そういえば話とかしたの?」

「うん、昨日。少しね」

ボルディーは答えた。

昨日の夜にボルディーはユースと話をしたようだ。

「あの子ね、誰かを守れるような力が欲しいんだって」

ボルディーがポツリと言った。

「聞いたの?」

グリークはまだ彼とはそういうことを尋ねたことはなかった。

「うん、軍人ってみんなだいたいこういうこと聞かれるからちょっと聞くがわに回ってみた」

ボルディーは模造刀を片付けながら言った。

前にボルディーは軍人が志望動機をよく尋ねられることを溢していた。特に子供や若者が多いらしい。

「君、自分が戦っている理由とか話したりでもしたの?」

「別に……そういうのは話したことはないけど…」

グリークが首をかしげた。

それを見るとボルディーが笑った。

「本当に昔の君を見ているようだよ」

ボルディーの無邪気な顔を久しぶりにグリークを見た。彼女のいつもの薄笑顔はどこか不気味さが見える。

グリークは彼女の笑顔に「そうか」と笑いながら返事をした。

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