LASTArk past at Iniquity 3
今日も代わり映えせずに朝はやってくる。
部屋を眺めても見慣れすぎた光景が広がっているだけだ。
ロウディアは机に突っ伏した体を起こした。どうやら本を読んでいてそのまま眠ってしまったようだ。
腕を圧迫していたので痺れている。
痺れが収まるのを少し待って、本を片付け身支度を始めた。
食パンにコーヒー。特にいつもと変わらないし、特に不満もない。
今日は畑などの仕事はせずに物置の整理をする予定だ。めんどくさがってほったらかしの古い肥料がいい加減かさばってきた。
朝食をさっさと食べ終え、外に出る。別に戸締まりはしなくてもいいだろう。
まだ朝早いので辺りを見てもそんなに外に人はいない。
ロウディアは足早に物置へと走っていった。物置はそんなに離れたところにはない。
ロウディアは物置の錆びた南京錠を開けた。かなり錆びているので触るとポロポロと錆が落ちたり手に茶色く付く。そろそろ変えなければと思ったが、そもそも物置事態にめぼしい物は入ってないし鍵をつける必要もない。
ドアを開けて、中に入り壁の突起に鍵を引っ掻けた。
物置の中は少し薄暗いが別に見えないというほどてもないので灯りは着けなかった。
奥の方でひっそりとつまれている埃被った肥料の袋を見つけた。
とりあえず、一番上のやつから外へと運び出す。
「結構、重たいな……これ…」
そう漏らしながらもなんとか全て外に運び出した。次からは使わないのはさっさと処分しようとロウディアは思った。
とりあえず肥料の状態を見るために袋を開ける。状態は悪くはないが少々匂う。動物の糞を使っているからだろうか。
この肥料がこう余っている理由としては自分の畑との愛荘が悪かったからだ。他の畑もこの肥料は合わなかったらしく人に譲ることもできないので処分する。
さすがにこれを向こうにこのまま運ぶのはやる気が出ない。重労働すぎる。
最初に荷台を持ってこればよかった。そう、考えながらロウディアは荷台を取りに一旦戻ろうとした。
「……へぇ…まだ青髪ってのが残ってるのか」
どこからか声がした。聞きなれない声だ。
ロウディアが辺りを見回してみるも誰もいない。思わず首を傾げる。
「おい、ここだ。木の上だよ」
また声がし、声の通りに木の上を見上げると。男が一人。木の枝に腰かけていた。頭には獣の耳と角がついている。
「誰?あんた」
ぶっきらぼうにロウディアが男に聞いた。少なくともこの辺りにすんでいるやつではないだろう。
「もしかして観光かなんか?教会ならあっちだけど…」
ロウディアは行ったことはないがこの村の少し先に大きな教会がある。そこはどうやら巡礼の一ヶ所になっていたり、綺麗なステンドグラスが有名らしく毎年信仰者や観光客をちらほらと見かける。
「俺は観光客なんかじゃねぇよ。ただの流れ者さ」
男がニヤリと悪そうな笑顔をして言った。
「悪い顔してんな…放浪者の割には軽装だけど」
「まあ、この辺りの空き家とかを転々としてんだよ」
ロウディアはなんでと尋ねそうになったがめんどくさいことしか起こらないと思いやめておいた。
「今時青髪なんて見ねぇなと思ってたら……あ、水色とかならいるか」
男はロウディアを見て、ぶつぶつと呟いている。
「何?そんなに珍しい?」
ロウディアがムッとした顔を向ける。男は「うわ、可愛くないな」と言った。
「可愛くないとかはどうでもいいけど、何か用?」
「別に。青髪って先住民族の特徴だろ?俺らはとうの昔に滅んだって話を聞いてたからよぉ」
男はそう言った。
「別に全員が滅んだ訳じゃないし、もっと大きいとことかいったら結構いるから」
「親も青髪だったのか?」
「知らない。顔も見たことないから」
父親はロウディアが生まれる前に、母親は自分が生まれてすぐに病気でぽっくりあの世に逝ってしまったらしい。二人がどうだったかは自分を引き取ってくれた床でも尋ねたことがなかったから知るよしもない。
「けど差別とかやっぱ残ってるんだろ?」
男は引き続き尋ねてきた。
「………町とかはもうほとんどないらしいけど農村部とかはまだ残ってる」
「まさにお前とかか?」
「まあ、全員がって訳じゃないけど」
ロウディアは続けて言った。
「この辺りを管理してる地主がそう。そしたらその娘もかんなり。いちいち子分引き連れて寄ってくるからもう…………めんどくさい」
ロウディアが鬱憤を吐き出すかのように言った。
「めんどくさいって…腹とかたたねぇのか?」
「腹立てるとかなんか思うのもダルい」
ロウディアはため息をついて、男の問いにそう答えた。
「怠惰の塊だなお前…そーゆーのに関して」
「だって腹立てたところで変わらないし」
ロウディアは積んである肥料の上に腰かけた。
「変なやつ」
男はそう呟いてニヤリと笑った。相変わらず悪そうな顔をする。
「あんたも大概じゃない?空き家を転々してるとこ」
ロウディアが男にそう言った。男は若干むっとした顔をした。
「ロウディアー?どこなのー?」
ふと、名前を呼ばれた。この声はノエルだ。
「ん?お前のことを読んでるのか?」
「うん、そう。じゃあ行くわ」
ロウディアは立ちあがった。そして、声のする方へと歩いていった。
男は彼女の背中を見送っていた。
「人間関係において怠惰の塊だな…あいつ。けど聞きがいがあるわ」
男は枝の上で立ちあがり木と木の上を飛び写って姿を消した。
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