LASTArk past at Iniquity 2
今日もブチブチと畑で草を無心でロウディアは草をむしりとっていた。草むしりは最初はしんどいが慣れてしまえばどうってことはない。頭を空っぽにしてむしりとっていけばあっという間に終わっていく。
むしり取った草を畑の端の方に寄せておいた。しばらく立てば肥料として利用できる。
ロウディアは体制を起こし伸びをした。最近雨が降っていないせいで地面が乾き、草が抜きにくかった。
ロウディアは魔法で小さな雨曇を作り畑へ水をまいた。あまり魔法は得意ではないがこれくらいはできる。それにロウディアは水属性だ。
魔法って便利だな、と、これを使うたびに思う。
水をまき終わり、手を洗い農具を片付け始める。明日は肥料でも少し巻いておこうか。
ぼうっと明日のことを考えていると後ろからノエルの声がした。
「ロウディア。今年の作物調子どう?」
ノエルがそう言った。水の入ったバケツを片手にぶら下げている。
そのノエルの後ろに黒髪の男が一人たっている。
「豊作でもないけど不作でもないね。ぼちぼち」
ロウディアが倉庫のドアを閉めながら言った。
「雨が降らない日が続いているけどね、そこまでひどい干魃は起こってないから今年も収穫祭はできそうだな。」
そう言って黒髪の男………アーサーが言った。
アーサーとは特別仲がいいとかそういうのではないがよく話しかけてくる。
村の皆は地主が青髪を嫌っているせいでロウディアと一線をおかざる得ない。だが、その中でもこの二人はロウディアに話しかけてきた。
「ノエル。それって畑にまく水?」
ロウディアがノエルの持っている水を指差した。
「うん。そうだよ。………でも、これだけじゃ足りないからまた行かなくちゃ…」
ノエルは苦笑いをしながら言った。ノエルの畑から水汲み場は結構距離があるので重いバケツを運ぶのは大変だろう。
「なんなら雨降らしてあげよっか?」
ロウディアがそう提案した。
「え?いいの?」
「うん。ノエルの畑位の広さなら私のでも十分に水をまけるし、水運ぶのってだるいし……」
一息で理由を述べると、ノエルは照れくさく申し訳なさそうな顔をした。
「じゃあ、お願いしようかな。ごめんねー、私も水属性なのに全く魔法使えないから…」
ノエルも水属性なのだが魔力が弱すぎて属性魔法が使えない。普通無属性魔法がある程度使えたらそれに比例して属性魔法が使えるのだが、希に片一方だけが全く使えない例があるらしい。ノエルがまさにその通りだった。
「いーよ。これから暇だから」
「いいなぁ…二人とも魔法が使えて…」
アーサーが羨ましそうに言った。アーサーは生まれつき魔力を持っていないため魔法が使えない。
「アーサーのとこもお願いしたら?」
「いや、俺はもう水やりはやったからいいよ」
ノエルにアーサーがそう答えた。
「じゃ、さっさとまいてこよ。またね」
「ばいばーい」
「おう、またあとで!」
ノエルとロウディアはアーサーに別れを告げると畑に向かって歩いていった。
畑に着くとロウディアは早速小さな雨曇を作り水をまいていく。ノエルは脇でそれを見ていた。
「ねぇ、それってどうやってやってるの?」
ノエルが尋ねてきた。
「えっと……雨雲を頭の中に思い浮かべて、こう…」
ざっくりとしたやり方をロウディアは伝える。ノエルは早速試してみるがやはり魔力が足りないのか。
雨雲ができても小さすぎたり、すぐに消えてしまう。
「………やっぱり私には無理かも…」
ノエルは落ち込んだ顔をした。
「……まあ、属性魔法がすべてって訳じゃないから大丈夫だよ……多分」
「多分ってなによー」
ノエルが笑いながら言った。「ごめんごめん」と、ロウディアも笑って返した。
***
ノエルと別れた後、ロウディアは家への道を歩いていた。これから特にすることもないので本の続きでも読もうか。そう考えながら家への近くへたどり着く。
「ん?」
家の前に誰かいる。ここからは遠くてだれかはっきりわからないがシルエットで大体検討はついた。
ユーリたちだ。
「ちょっといいかしら」
ユーリがこちらに気付き、金髪の巻き髪をかきあげて言った。
「何?私なんかした?」
別に嫌なら関わらなくていいのにという思いを隠し、特にユーリとの中で思い当たることがないのでロウディアは聞いた。
しかしユーリは気にくわなかったのかロウディアの腕をつかむと家の裏まで無理やり連れてきた。
子分たちもその後についてくる。
「ねぇ、あなたさっきアーサーと何を話してたの」
ユーリがいきなりそんなことを聞いてきた。
アーサーは優しい好青年で村の誰もが知っている。そんな彼に想いを寄せている子もいるだろう。
「別に。ていうか、ノエルについてきただけだと思うけど」
これが女の嫉妬というものか。
ユーリがアーサーのことを気に入っているのか、はたまた子分の誰かがそうなのかどうかは知らない。
単にロウディアがだれかと馴れ馴れしくしているのが気に入らないだけかもしれない。
ロウディアの答えに腹を立てたのかユーリはその緑の目をつり上げて怒鳴った。
「私の聞いていることと答えなさい!!青髪のくせして!!!」
ユーリが手を振り上げた。
今までは嫌みを言われたり、仕事の邪魔をされたりだったがユーリが手を出そうとしたのは初めてだ。
ロウディアは驚いて動けなかった。多分このまま動けなかったら自分の頬にユーリーの平手打ちが入るだろう。
しかし、ユーリの平手打ちが入ることはなかった。
「待って!!」
ノエルが叫んでユーリとロウディアの間に入った。
ユーリは驚いた顔をした。
「ノエル……」
「えー……な、何があったのか知らないけど暴力はよくないよ」
ノエルは精一杯の愛想をふりまき、ユーリに振り上げた手を下ろさせる。
「なによ、あなたは関係ないでしょ?!私はただ忌ま忌ましい青髪が色目をつかって……」
「色目を使った覚えないんだけど」
ロウディアがポロリと呟くと、ノエルが慌てて「黙ってて!!」と、言う。
「アーサーと話してたのは今年の収穫祭のことだしロウディアに声をかけたのは私だから関係はあるよ。それに……暴力で解決するのはよくないよ」
最後のところをノエルに面と向かって言われてユーリは何も言えなくなった。
「……っ!もういいわ!いきましょう」
そう投げ捨ててユーリたちは帰って言った。
ユーリたちが完全に見えなくなるのを確認するとユーリは大きなため息をした。そしてロウディアの方をみた。
「大丈夫?怪我とかしてないよね?ね?」
ロウディアの肩を掴み、心配そうな顔で聞いた。
「大丈夫だよ。なにもされてないし」
ロウディアがそう言うとノエルが安心したような顔をした。
「ところでなんでこんなとこにいるの?」
「ちょっと用があって……そうしたら声が聞こえてきて」
ノエルがそう言った。
「もう……ロウディアは言葉足らずなことがあるから気を付けてね!また今日みたいなことになったら大変だし」
「えぇ……めんどくさいなぁ…」
ノエルの折角の助言に対して、ロウディアは嫌そうな顔をした。
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