LASTArk past at justice1
「お前そろそろ他のギルドで修行してみたらどうだ」
父親から突然そんなことを言われた。
両親はギルドを運営しており自分もそのうちの一つに所属し、武器の基本的な使い方などをいろいろ叩き込まれていた。
あまりに急なことだったのでそのときはひどく驚いたが、両親は他のところでもっといろいろ経験して欲しかったのだろう。
ちょうどこの前12になったのを境にユースは別のギルドへと移った。
どのくらいここにいる予定かはわからない。そのへんは好きにしろと言われた。
細かい手続きを済ませ、係りの者にしばらくここで待っているように言われた。窓の縁にもたれ外を眺める。
このギルド「ディアント・リッダーオルデン」は規模は大きくないもののそこそこの実績がある。……らしい。
このギルドのあるところはモンスターの出現頻度が高いらしくモンスター討伐に特化しているギルドが多い中、犯罪取り締まりでも実績を持っているのがここの強みのようだ。
夕日に染まった見慣れない景色をぼうっと眺める。ギルドの本拠地は小高い丘の上にあるため、ここからは町を一望できる。
今回入るギルドのグループメンバーは五人。それ以外はなにも聞かされていない。少なくとも自分よりは全員年上だということだ。
まあ、自分がまだ若すぎるだけなのだが。
両親の元では自分より少し年が上の子たちと町の見回りの手伝いをしていた。今回もそういったとこから始まるのだろうか。
そうぼんやりとこれからのことを考えていると、後ろからいきなり肩を掴まれた。
「!?」
ビクっと驚き後ろを向りむこうとする。
が、その間もなく。ユースはその肩をつかんできたやつに担がれてしまった。
「!?ちょ!?」
「こいつでいいのかぁ?まあ、グリークにききゃあいっか!オーイ!」
ユースの肩を掴んだ犯人は彼を担いだまま部屋を飛び出してダッシュでどこかへと向かう。
顔は見えないが声と体つきからしてかなり大柄な男であることがわかる。
「え、えーーっ?!」
いろいろおかしすぎてこんな声しか出ない。しかも担がれると結構揺れる。なにか言うと舌を噛みそうだ。
バン!!と、扉が開かれる音がした。男の背中方面に頭があるので前は見えない。
「つれてきたぞ!!こいつでいいかどうかわかんねーけど!!」
そう男が言った。ユースはようやく下ろしてくれるのかと思った。
が、男はユースを担ぐ形から体制を変えた。
「………え?」
しかも、なんか体制がおかしい。これはもしかして……。
「とりあえず受けとれ!!そぉーれっ!!!!」
ユースが察した通りだった。
男はユースをそのまま放り投げた。
「うわぁああああ!!」
「わぁああああっ!!?」
ユースは床に落ちることを覚悟したが、自分と同時に悲鳴を上げた誰かにキャッチされた。
しかし、その人物はユースの重さが急にのしかかったせいか尻餅をついた。
「………センリ、いきなり新入り君を投げ飛ばすのはどうかと思うよ」
ユースをキャッチした男が投げ飛ばした男に言った。
「はははっ!!悪いな!けどそのほうが手っ取り早いと思って」
投げ飛ばした男は大口を開けて笑いながら言った。
ユースはいまだ状況を掴めず男にだき抱えられたまま固まっていた。
「大丈夫?怪我とかない?」
キャッチしてくれた男がユースに話しかけ彼を降ろす。
「は、はい……なんとも……」
いろいろ起こりすぎてしどろもどろにしか話せない。
「ごめんね、いきなりあんなので……」
男は苦笑いをしながらユースを投げ飛ばした男の方を見る。
彼は頭にはてなマークを浮かべ、首をかしげてこちらを見てる。
男どうしようもないな、といった顔をしてため息をついた。
「はぁ………まあいっか。君は…ユースティア・ソルダー君であってるかな?」
男はユースの方を向いた。ユースはその言葉に頷いた
「自己紹介がまだだったね。俺はグリーク・ジーヴァ。副団長をやってる……んであっちの君を投げ飛ばしたのがセンリ・スドウ」
グリークに簡単に紹介をされたセンリは「よろしく」と言った。担がれたときからかなり大柄だと予想はしていたが改めてみるとセンリはユースの頭一つ分ほど背が高く体つきもけっこうがっしりしている。
「いきなり人を投げ飛ばしたりする大雑把なやつだけどね、悪いやつじゃないから……」
「はあ………」
グリークが呆れた笑みを浮かべて言った。けど、これは大雑把で片付けられるようなものではないとユースは思った。
「本当はこれからセンリに案内とか他のメンバーとの顔合わせとかさせようと思ったんだけど……また、投げ飛ばすようなことがあるといけないから俺がするわ」
グリークがユースについてくるように言った。
ユースはこれからまたあのセンリに投げ飛ばされることがあるのか、と思いセンリの方を少しみて後をついていった。正直もう投げ飛ばされるのは勘弁してほしいと思った。
***
「オブディット・バーグだよ。みんなからはオブディーって呼ばれてるよ。よろしくね」
目の前の丸眼鏡をかけた獣人の女がそういった。耳を見る限り種類は犬だろうか。
「よろしくお願いします」
ユースがそう返した。
「ユース君って今いくつ?」
オブディットがユースに尋ねてきた。
「今……12ですけど」
「え、もうちょっと上かと思ってた。15とか……」
オブディットの言葉にグリークとオブディットの隣にいる男も頷く。
「僕はノア・クロムウェル・ユランブルク。よろしく」
オブディットの隣にいる少し小柄な男が言った。クセの強い髪が特徴でもあるがユースはその男が背負っている大きなものに目がいく。
「あのー、その背負ってるのって………」
「え、ああこれか……棺だけど」
そう言ってノアが自分の体より大きな棺を見せる。特に飾り気はないが蓋には青いラインが入っている。
「僕はギルドの傍ら葬儀屋をしてるんだ。普段はこれに魔力を媒介してる」
要するに杖の代わりに棺を使って魔力を媒介しているということだ。
「けどなんで棺……」
「え?いざとなったらぶん殴れるし」
ノアが表情を変えずにさらりと言った。童顔気味の彼からそういうことが出てくるとは思ってなかった。
とりあえずメンバーとの顔合わせを終わり二人は廊下を歩いていた。
「まあ、とあえず俺らのとこはこのくらいかな」
「……変わった人多いですね…」
ユースはポツリとそんなことをいった。グリークは「まあね……」と苦笑いをした。
「けど楽しいもんだよ。こういうのも」
グリークがそういった。
「そういえば……まだ団長にあってないような気が」
ユースはグリークに尋ねた。
「ああ……団長さんなんだけどね、あの人忙しくていないことが多いんだ」
「へぇ………」
忙しいとは、別の仕事でも持っているのだろうか。
「まあ、楽しみにしておいてよ。前に君のこと話したらだいぶ会いたそうにしてたよ」
グリークは微笑みながらそう言った。
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