2-7

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宿場町だからか、夜の居酒屋や食いもの屋は繁盛していた。

俺自身も適当に屋台に入り、手元にある”道具”をひっくり返しながら食事を摂る。

公国は豚の生産が盛んなようで、そいつの肉をk樹脂にさして焼いた串焼きはなかなかにうまかった。


「海にいたころはこんなの乾いたベーコンでしか食わなかったな」


そんなことを言いながら、ほかにふかした芋を口に運ぶ。

屋台で腹をいくらか膨らしてから外へ出た。

そんなに長くいたつもりはなかったが、町はすっかり静かになっている。

人はおおよそ居なくなっていた。

居たとしても店の片づけをしているものがほとんどで、それもそんなに多くはない。


仕事に入る為、目的地へと歩きだす。

途中深くローブを被った小柄な人影とすれ違った。

長い棒のようなものを布でくるんでいるのが印象的だった。


「あの女の部下か?周到なことだ」


さっき来た女の使いと似たような格好しているなと思った。

女の使いはノノチア姫がどこにいるか告げてきた。

女自身が来なかったことに苛ついたが、言っても仕方のないことだ。

場所を聞いた俺は襲撃の時刻を伝えた。


夜になれば時刻は分からない。

どこの街も昼間は陽の光や、砂時計を用いて一定の間隔で鐘塔の鐘を鳴らす。

さすがに夜間は鳴らさないがこの街の鐘塔には砂時計があり、それを使えば夜でもおおよその時刻が分かった。

鐘塔からそれを盗むのは訳なかった。


「2個の砂時計をうまく使うわけね。随分と公国は時間にうるさいようだ。この砂が落ちきったら1時間、こっちのは油か?随分と動きが遅い」


”道具”の使い方メモを眺めながら時間をつぶしていた。

2個の砂時計は大きさが違っており、小さいほうは1日を24分割した時間を、大きいほうは油と砂が混ざっており1日を半分にした時間を指し示すということだった。

昼間は小さいほうを基準にして鐘を鳴らし、大きいほうは夜の間使う。

次の日までのつなぎをするのだろう。


日が暮れてから随分経った。

小さな砂時計を3回はひっくりかえしたろうか。


「女の使いの話だと、この宿の2階の角部屋って言ってたな。灯りは、、、無いか。もう寝てるな」


ノノチア姫の暗殺、その依頼はまだ継続中だ。

女の部下は昼間襲撃した奴らの他にも多くいるようで、宿の周りをうろうろしているのが時折見えた。

襲撃はするが連携する気はなかった。

襲撃する時刻というのも適当で、伝えた時刻よりも早めに襲撃するつもりだった。


「この砂時計が落ち切ったらいきますかね」


酒が入った瓶を手に取る。

酔わない程度に瓶を傾ける。

気分がいい位の酔いの時は何事もうまくいくもんだ。


サラサラサラサラ……


砂時計が静かになった。


「落ち切ったか」


宿の前にいた俺は鉤縄を取り出す。

屋根にひっかける。

そこから上に上がるのは一瞬だ。

角部屋の窓の位置を確認する。

鉤縄を屋根の適当なところへ固定し、ロープの長さを調整した。


「窓際にベッドがあるから一太刀かぶせて、もし居なかったら、、、まあ入っちまってから皆殺しにすればいいか」


ロープを自身に括り付け、軽く駆けだして屋根の上から飛び降りた。

ロープの長さが限界に達すると俺の体を引っ張り、外へ向かう体を宿へと引き寄せる。


ツガシャンッ


剣を引き抜き一番近くのベッドに突き立てた。

感触はない。

もう一つのベッドに飛び移り布団ごと切り裂くように剣を振り払った。

布団が宙を舞うだけで何もなかった。


ヒゥォッ キィンッ


殺気はなかった。

刃が一閃、俺に向かって降りかかってきた。

鋭い一撃。

だがおれはこれを受けきることができた。

うなじに剣を回すことでガードした。

それは俺自身の技量もあったが、それ以上に真っ暗闇の中で確実に首元を狙う相手の技術にもあった。


相手の剣はそれほど長くもなく太くもない。

いわゆる護剣の類の小剣だ。

刺突用のそれではなく両刃で斬る事が目的だったのが特徴的だった。

小剣だがそれでも一撃は鋭く重い。


剣を受けた状態で視線を動かす。

男の右手には短銃を握られている。

そいつをこちらに向けるのが見える。


「ウソだろ!?」


ダゥンッ


激しい音と火薬のにおいが部屋の中に広がった。





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