1-14
wā
*************************************
避難所の中は意外と広い。
避難所は洞窟だが、かつては坑道だったらしい。
でもそれも数百年前の話だ。
今は要所に組まれた木の柱からそうだったことがうかがえるほどで、鉱石の類はない。
ワズは坑道の入口付近で雨の止んだ空を眺めていた。
満天の星と徐々に頂点へと昇る月がそこにはあった。
月明りを頼りに剣を研ぐ。
前の盗賊との戦いで切っ先がいくらか刃こぼれしていた。
イルクから選択を迫られた後、無言で俺たちは避難所へ戻った。
内容を皆に伝える。
ルタンの母親を含め大人たちは困惑していた。
そんな中でも子供たちは理解していないのか、遊びまわっているのが印象的だった。
ルタンの母親は、内容を聞いて目を伏せていたがしばらくすると「なんとかなるわよ」と言っていた。
あの人もつらい思いをしたはずだ。
ただただ強いと思った。
結局新しい土地へ移る方向で話はまとまった。
ルタンも移住となればどうしたらいいか、いろいろ考え始めている。
エニーはというと少し困惑したような顔だった。
剣を手に取り乾ききってない土を踏みしめる。
手ごろな木を探す。
太い幹から新しく生えた小枝を見つける。
小枝の先の小さな葉が生命の強さを表していた。
スン
剣を振る。
難なく小枝は地に落ちた。
切れ味を確かめた。
満足とはいかないまでも十分だった。
「親父ならもっとうまく切る、、、」
剣をゆっくりと空にかざす。
その銀色は月明りを吸い込むようにして輝いていた。
「覚悟は決まってる。あとは、、、、」
業を背負うかどうかだ。
一度避難所に目を向ける。
エニーの寝顔があった。
ルタンは寝苦しそうに寝返りを打っている。
集中する。
剣をしまい森の方へと歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます