1-8

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馬から降り、こっちに来る男が2人。

明らかに村の人間や軍の人間ではない。

ボロボロの服に、胸当てを身に着けている。

手には剣、もう一人は手斧を提げている。


男が叫んでいた言葉を思い出していた。

エニーに確認するように話しかける。


「ガキがいるってのは俺たちのことか。エニー、弓は?」

「持ってきてるけどさっきの家に置いてきた、、、」

「わかった。下がってろ」


エニーが俺の背に隠れる。

剣はすでに両手に握りしめてある。

この剣は親父が徴兵されたときに置いて行ったものだ。

それが原因で親父が死んだとは思わないが、親父の魂はここにあると思っている。


「ちっ、ガキの方は殺しちまうか。剣を持ってたら流石に生け捕りは無理だな」

「おい、ガキ。おとなしく捕まっとけ。俺たちも余計に殺したくはねえんだ」

「盗賊の癖に何言ってるんだ。今まで何人殺してきたんだよ」

「クソがっ、やっぱり殺しちまおう」

「おう」


男2人が同時に走ってくる。

親父が教えてくれた剣術のような間合いや動きはない。

まさに襲い掛かってくるといった感じだ。

先にかかって来たほうを突き殺してそのままそいつを盾に蹴飛ばしてやる。

戦いの動きをイメージする。

それで行こう。


ダゥンッ


弾けるような音が響いた。

何の音かはわからなかったが手斧の男が一歩踏みとどまって後ろを見たのを見逃さなかった。

かくいう俺も音に驚いて一瞬体が固まった。

その隙を突くような形で剣の男はまっすぐ飛び込んできた。

剣で切りかかってくるというよりかは体格の勢いで俺自体に覆いかぶさりそうな形だ。


「エニー、もっと下がれ!」


エニーから反応はなかったが後ろに跳ぶ。

幸いエニーに当たることはなかった。

剣の男が大きく空振りする。

そのまま首元めがけて袈裟懸けに剣を振るうが、男は体を反らせて胸元付近が浅く切りつけられる形になる。

胸当てもあって致命傷には程遠い。

だがそれでよかった。

少しでも体勢が崩れてくれれば体格差があっても体当たりが効く。

剣を袈裟切りに振り切ったまま右肩で体当たりをした。

予定通り、相手が背から地面に倒れる。

武器を握っている右手を踏み付け自由をなくす。

そのまま剣を胸元に突き立てた。


ズグン


胸当ては革製だったのだろうか、それをものともせず剣は男の体を貫いた。


ガスッガスッシタンッガスッ


予想外だったのは貫かれた男の抵抗が激しいことだった。

手足を振り、暴れ、振り回され俺も地面に転がされる形になった。


「まずい!」


手斧の男はもう目の前にいてもいいぐらいの時間があった。

この隙はさすがにどうしようもない。

攻撃が来る前に体勢を立て直そうとする。

が、そこに手斧の男は立っていなかった。


胸を貫かれた男は血を失いすぎたのか意識を失っている。

もう長くはないだろう。

手斧の男はというと喉に矢が突き刺さり、屈んだ状態で吐血していた。

矢を抜こうともがいているが呼吸がまともにできていない。

こちらも時間の問題だと思った。


とりあえず何とかなった。


後ろを見るとエニーが弓を手に座り込んでいた。

顔色は青白く、目は遠くを見ながら泳いでいる。

放心状態だった。


「エニーがやったのか?」


優しく声をかける。


「わたし、わたし、、、」


近づく。


「いいんだ。気にするな。助かった。ありがとう」


妹を強く抱きしめた。

強く。

ただ強く。


胸元が濡れていくのを感じた。





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