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陽が木々の間から斜めに射し込む。

夕暮れのそれとは違って少し暖かさを含んでいる気がした。

陽が昇り始め、風が木の葉を揺らす音が方々に響いている。


村に戻るのはなるべく早いほうがいいと思った。

イルクは調査に来ているといったが、実際は嘘をついている可能性だってある。

昨晩は少し変形だったが一対一の勝負に負け、情けまでかけられた。

それが腹立たしいといえば腹立たしいが、それ以上に故郷がこれ以上傷つけられるのは許せなかった。


村にたどり着くと早速イルクの姿が見えた。

半壊となった家の床の上、外套を羽織り横になっている。

その姿を見るや剣に手をかけた。


「今なら、、、やれる、、、」


家の裏を進みイルクが寝ている場所に近づく、崩れた壁を越え木の床をきしませた。

目的とする男は無防備にも横を向いて寝ており、こちらに背を見せている。


「夜襲をかけるなら夜だぞ。少年、」


その目的の男から声が発せられた。

はっきりとした声だったのが剣を握る力をさらに強くさせた。


「それと足音を立てないようにな。例えば床がきしむ音などは論外だ」

「なんで、わかったんだ?」


思わず聞いていた。

床がきしむ音なんかは風が吹くようなこの環境では関係ないに等しい。

昨日もそうだったが、なぜ家屋の中から外にいる俺たちの奇襲がわかったのだろうか。

この男には近づいてくるものがすべてわかるというのだろうか。


未知の状況に冷汗が自分の頬をつたうのがわかった。

しばらくして答えがあった。


「それはそうだな。。。そいつを説明するのは少し難しいな。なんにしても剣をしまってくれると助かる」

「、、、、あ、あぁ」


起き上がりながら話す男の指示に従い剣を鞘に納めてしまった。


「もう少し早く来ると思っていたんだが、、、ひとりか?」

「あぁ」

「緊張しないでくれ、ワズ。俺はお前のことがそれほど嫌いじゃない。朝メシは食ったのか?今から作るから分けてやろう」

「いや、おれは大丈夫だ」

「まぁそういうな。簡単なものだが食わせてやろう」

「あ、おい」


俺の言葉を無視してイルクは動き出した。

予想外動きを見せる男に自分が呑み込まれているのを理解した。

だがそれも少し悪くないような気がしてもいる。


しばらくして小さな鍋に湯を沸かしたイルクはそこに丸めた団子のようなものを入れる。

もう湯が沸き立つのを待ち塩を振って器に取り分けた。

最後に山菜だろうか、細い茎の植物を浮かせる。


「ほれ」

「あ、あぁ。頂くよ」


スープを口に含む。

塩味の中に少し鶏肉の風味が口の中に広がる。

団子もただの団子ではなくほぐれた肉が混じっている。

これが鶏肉の風味の元なのだろうか。

山菜が自然と口に入り、柔らかい辛みを感じさせた。

それがまたスープを飲む勢いを進ませた。


「美味いんだな。これ」

「本来この団子は軍の糧食でそのまま食うんだが、工夫次第で美味くできるんだ」

「軍?やっぱりあんた、帝国軍の人間なのか?」


帝国軍は俺たちの村を壊した原因だ。

許せない。

自分でも語気が強くなるのを感じた。


「本当にただの調査なんだろうな」

「ふむ。お前には少し本当のことを話すか」


イルクに呑み込まれかかっていた自分を憎む。

お互い座ってはいるが、俺は気持ち距離を置いた。

剣には手をかけていないが抜けるように心を構える。


「調査は本当だ。だが俺は正確に言えば軍の人間じゃない。帝国の政務部に所属している。今回はヤツィマに派遣された部隊が全滅した原因を探ること、それとお前らのこれからを決めるために来た」

「俺らのこれから?」

「暮らしていけるような収入があるかとか、村を自衛する力があるかとか、そういったことを調査しに来た。要は村が村としてやっていけるかどうかの確認だな」

「…もし、その力が無いと判断されたら?」

「帝国が接収する。お前らは別の集落か土地を与えることになるだろう」


シュカンッ


立ち上がり剣を抜いた。


「俺らの故郷をこれ以上汚させる訳にはいかない!」


イルクはそのままの姿勢で俺の顔を見ていた。

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