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「つまりだ。俺は国から派遣された調査官で、話を聞かせてほしいだけなんだ」

「話すことなんかない!さっさと殺せ!」

「兄さん!」

「ワズ、諦めろ。イルクさんは悪い人じゃない」

「ルタンって言ったな。お前さんとは話ができそうだ」


先の小競り合いの決着に少年に振り下ろした剣は、そのままそいつの目の前の地面に突き刺した。

ワズと呼ばれた少年が目を見開いて驚いてる間に持っていたロープで拘束した。

それでもまだ反抗してきそうなので、むりやり正座させている。

ほかの2人はというと、自ら武器を捨てたのでそのまま好きな格好をさせている。

もちろん武器は俺が確保しているが。


「早速だが教えてくれ。この村のひどい有様はなんだ?何が起こった?」

「イルクさん、詳しいことは僕たちもわからないんだ。戦いのときには避難していて」

「だが今まで見たことないようなありさまだ。崩れた家屋も焼き払われた訳じゃなさそうだしな」

「おい!おっさん!俺たちはわからないことはわからないんだ!時間をかけさせるな!」


相変わらず、剣士のワズは食らいついてくる。

もちろんほかのやつと違い、拘束したり正座させたりと差別はしているがそんなに苛立たせるようなことをしたのだろうか。

苛立ちよりかは焦っているような様子がうかがえる。


少し後ろで丸太を背にひざを抱えて座っている少女エニーが声をかけてきた。


「薬が必要なの」

「なに?薬?」

「それとみんなの今日のご飯も」

「なんだって?何を言っているんだ」


口下手なのか言葉が短い。

それとも警戒心があるのか余計なことを言わないようにしているのかもしれない。

よく見ると眉間にしわを寄せてにらんでいる。

こいつも拘束しておくべきだったか?


「えっと、その僕たちは生き残った皆で避難を続けてるんだ。もし盗賊なんかが村を襲ってきたら、俺たちだけじゃ守れないんだ」

「なるほどな。それで夜の間に動けるやつで残った物資を取りに来てるってわけか」


ルタンが補足してくれる。

彼が居なければ会話が進まないことを理解した。

しばらくはこいつと話をしよう。


「だから早く俺たちの縄を解け!解放しろ!」


ワズが騒いでいる。

ルタンと話をしようとしたらこれだ。

拘束しているのはお前だけなんだがな。

まあ、彼らは敵意こそあるが別に襲い掛かってくるわけではなさそうだ。


「わかった、いいだろう。どちらにしてももう遅い。明日、改めて仕切りなおそう」

「本当か!」

「ああ」


ワズの縄を解く。

武器もそれぞれ返した。

ここでためらうとまた面倒なことになりそうだったので速やかに済ませた。


返し終わったあたりでルタンが提案してきた。


「イルクさん、ありがとう。もしよければ俺たちの避難所まで来てくれませんか」

「おい!ルタン!」

「その、、、立派な寝床も食事もないがお詫びがしたいんだ」


少し予想外の提案だった。

このルタンと言う男は聡いが、お人好しが過ぎるところがあるようだ。

それとも俺の腕を買って、利用しようとしているなら大したものだ。


「ありがたい提案だがやめておこう」

「な、何でですか?」

「人のことを信用しすぎだ」

「私もこの人を呼ぶことには賛成できないかも」

「そうだな。そこのお嬢さんの言うとおりだ」


軽くため息をつく。

助けることは目的じゃない。

仕事を終えることが最優先だ。


「まあ俺の都合でしばらく村に居させてもらう。それは許してくれ」

「なんだと!おいおっさん!」

「わかりました。明日また会いましょう。行こう、ワズ。急いで戻らなきゃならない」


ワズの言葉を制してルタンが話をまとめてくれた。

3人が無事な家屋に入っていき、いくらか荷物をまとめて出てきた。

俺はというと、ひらけたところに火を焚いて湯を沸かし始めたところだった。


「それではまた明日」


改めてルタンが挨拶をしてエニーは会釈をした。

ワズは一瞥したあと、すぐに2人を先導する形で森の中に消えていった。


「しかし、初対面で『おっさん』か。そういう年齢になったのだな。。。」


そういえば今年で42になるのかと深く嘆息した。

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