1-3
ɪ
*************************************
シタンッ
矢が玄関の戸に刺さっている。
いい腕だと感じた。
その証拠に手袋だけを戸の外に出したらそれを正確に射抜かれていた。
射手の距離がわからないが方向はわかった。
ドアを一気に開く、射手がどんなに優秀でも次の矢をつがえるまでは時間がある。
左に剣士が右の少し離れたところに槍を持った男がいる。
槍の男に着ていた外套を投げかけた。
「うわっ!みえない!」
外套は槍の男に覆いかぶさり、うまく目くらましになったようだ。
剣士の方は仲間に何が起きてもこちらから視線を外さない。
剣士を無視して素早く場所を移動する。
途中で剣士が俺の思惑に気づき動き出したが手遅れだった。
確認するかのように剣士に話しかけながら少し煽る。
「随分若いな。18才くらいか??」
「あんた、ただの野盗じゃないな」
相手の質問には答えない。
答えて時間をかければ弓使いが誤射を警戒して移動、槍の男もこっちに追いついてしまう。
この位置取りは、俺←剣士←弓使いが直線で並ぶ位置なのでめっぽう有利だ。
「悪いが本気で行くぞ、少年」
左手の剣をそのまま相手の顔にむけて突き出す。
カウンッ
若い剣士は両手で握った剣を下から振り、突き出した剣を弾いた。
剣士のほうが剣を振るのが早いか剣を払った勢いを返しそのまま上から振り下ろしてくる。
右手の甲で受ける、正確には受け流した。
左手は軽いグローブをつけているが右手にはこういった時のために厚い籠手を身に着けている。
「クソっ!剣はオトリか!」
剣士が驚いている。
そのまま籠手に流されて大地に刺さった剣を足で踏みこみ抑え込んだ。
同時に左手の剣は少年の喉元をおさえる。
一瞬ですべては終わった。
「ぐっ!殺すのか!?この盗人が!!」
「…」
「やるならやってみろ!」
「…いや、お前らは勘違いしている」
周りを見る。
暗がりでよく見えないが弓使いがこちらを狙っていた。
槍の男も体勢を立て直しこちらを向いている。
仮にこいつの首飛ばせば、他の二人が仕掛けてくるだろう。
「おい!弓使いと槍の男!こいつが殺されたくなかったら武器を捨てろ!」
「エニー!構うな撃て!隙ができればルタンが仕留める!」
「エニーとやら!お前が撃てば矢が俺を貫くよりも早くこいつの首を飛ばすぞ!」
沈黙があった。
改めて剣士の顔を見る。
赤い瞳が強くこちらをにらむ。
いや赤いのはランプの火のせいか。
どちらにしても強い意志を感じた。
しばらくして槍の男が声を上げた。
「降参だ。すまない!そいつは僕らにとって必要なんだ!命だけは許してくれ。他は何でもやるから!エニーも頼む!弓を下ろしてくれ!」
「ルタン!」
「賢明だな」
ルタンと呼ばれた男は槍をその場に捨てた。
まもなく立ち木のある暗がりから弓と矢が投げ捨てられた。
「くそ!お前ら!」
若い剣士は仲間があきらめたことに悪態をつくが決着はついていた。
剣士が持っていた剣を拾い、首を抑えていた剣をしまう。
剣士のそれは手入れがされていてとても良い剣だ。
それを軽く振り上げる。
「だが、、、そうだな。剣を交えたのだ。こいつを許すかどうかは別だな」
「ちっ!クズが!」
俺はまっすぐ剣を振り下ろした。
「ワズ!」
「兄さん!」
剣士を呼ぶ声が周囲に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます