第20話目的

ソウタがインビジブルを使って数分後、夏川がギルドの前にやってきた。


「すいません!ここに黒輝ソウタ君はいませんでしたか?」

「ついさっきまでいましたよ」

「本当ですか!?どこにいますか!?」

「お、落ち着いてください、夏川さん!彼らは突然姿を消したのでどこにいるかはわかりません!」

「え?彼、ら?」

「はい」

「黒輝君と一緒に誰かいたんですか?」

「はい、魔女のような服を着た少女といましたよ」

「しょ、少女と一瞬……」


夏川は少しショックを受けていた。元の世界では誰とも関わろうとしていなかった少年が少女と一緒にいる事実に。そして落ち込みながらもソウタの場所を聞く。


「あの、黒輝君はこれからどこに行くとか言ってましたか?」

「すみません、わからないです」

「そうですか。ありがとうございます」


そう言って夏川はその場を去っていった。その彼女の背中は少し悲しそうに見えた。



その頃、ソウタとセリスは街を出て少し歩いていた。


「セリスさん」

「なんでしょう」

「これから俺達はどこへ行けばいいのでしょう」

「大迷宮です」

「詳しい場所がわかりません」

「それなら知っています」

「え?マジで?」


俺はセリスのまさかの発言に驚いてしまった。


「なんで知ってるんだ?」

「師匠が教えてくれたの。ソウタは戦闘以外ダメダメだろうからって」

「あのババァ、次あったらアイアンクローしてやる」

「ちなみに、師匠は魔人族で年齢は七十歳です。師匠がババァなら私はどうなるのでしょうか?」

「え?」


またまたセリスのまさかの発言に驚いてしまう。いや、それよりも今のこの状況はかなりまずい。セリスの目から光が失っているということは、怒っているということだ。しかも恐い怒り方の方だ。どうする、どうすればいいんだこの状況!なにかいい案はないか、と全力で考え、先程のセリスの質問に答えをだす。


「セリスはちっちゃいから子供だ」

「じゃあソウタは背が高いからジジィ?」

「俺はまだ十六歳だぞ?若き少年だ」

「私は百五十二歳だよ?さっきソウタが言ったこと矛盾してるよ?」

「セ、セリスは子供に見えるからいいんだよ!年齢くらい気にすんな!」

「滅茶苦茶だよ!」


そう言って二人で笑い合い、次の目的の場所を確認する。


「ここから真っ直ぐ行って、アクアシティって街に着いたら空の街へ行くための転送陣に乗せてもらうんだよ!」

「へぇ〜、ここからアクアシティまでどのくらいかかるんだ?」

「ん〜、だいたい三週間くらいかな!」

「なげぇなぁ」

「そうだね!じゃあその間ソウタのこといっぱい教えて!」

「いいけど、つまらねぇぞ?」

「うん!大丈夫!」


そう言って元の世界であった出来事を全て話した。するとセリスが泣き始めた。理由は、俺の辛い過去を知ったからだ。自分の方が長い期間辛い目にあってんのに、どうして俺のことで泣けんだよ、と思いながらセリスの頭を撫でてやる。


「なんでお前が泣いてんだよ」

「だって、ソウタ、可哀想」

「いいんだよ、今はセリスが側にいてくれてるじゃねぇか」

「今は、じゃないよ」

「どういうことだ?」

「これからもずっと側にいるよ。嫌?」


セリスは背が小さいので意識しなくても上目遣いになってしまう。しかもさっきまで泣いていたので目がうるうるしていてすごく可愛い。彼女にこんなことを言われては返事は一つしかないだろ?そう思い、セリスを抱きしめながら、


「嫌なわけねぇだろ?大好きだよ、セリス」

「うん、私も大好きだよ」


そして、二人がキスしようとし、唇と唇が触れそうになった瞬間、


「おいおい、こんなとこでイチャついてんじゃねぇぜ?兄ちゃんと嬢ちゃん」

「そうだぜぇ、俺達みたいなこわーい人達がここらへんにはいーっぱい、いるんだからよぉ」


そう言って二十人ぐらいの男達に囲まれた。


「へへっ、そうだ!そこの嬢ちゃんと金と武器を渡してくれたら兄ちゃんは見逃してやるよ。安心していいぜ?ちゃんと嬢ちゃんは後で返してやるから」

「まぁ、壊れてるかもしれねぇがな?」


そう言って「「ガハハハハ」」と全員が笑い出した。


「ほら、早く渡せよ」


そう言って男の一人がセリスに触ろうとした瞬間に、男の腕が「ブシュッ!」という音とともに無くなった。


「は?え?な、なんでだァァァァァ!?」


男は失った手の部分から出てきた血を止めようと、逆の手で止めようとしたができなかった。なぜなら、逆の手も無くなっているからだ。逆の手も無くなっていることに気付くと、


「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」


と叫びだした。突然両手が無くなったのだ、叫びたくもなるだろう。もちろん両手を切り落としたのはソウタだ。ソウタのステータスであればその辺の人達に抜刀するところは見えないので、突然手が無くなったように見えたのだ。


そして他の男が両手を失った男を連れ戻した。


「おい!大丈夫か!?」

「両手を失ったんだぞ!?大丈夫にみえるか!?」


と仲間内で揉めている。すると十人くらいの男が俺らの方に向かってきた。


「てめぇ!俺達の仲間に何をしたんだ!?」

「知らねぇよ」

「嘘つくんじゃねぇよ!」


そう言って腰から抜き出した剣で飛びかかってきたので応戦しようと俺も刀を抜こうとするとセリスに止められた。そして、セリスが魔法を唱えた。


「火輪」


その瞬間、男達が炎の渦に包まれた。


「「ギャァァァァァ!!!!」」


と言う声が聞こえるがすぐに聞こえなくなる。すると後ろにいた男達が怯えて、両手を失った男を俺達の方に投げ、逃げ出した。すると両手を失った男が、


「テメェら許さねぇからなぁ!」


と鬼の形相で叫び、そしてソウタによって真っ二つに切られた。そして逃げ出した男達を追う。


「ひぃぃぃぃ!!」


と言う声が森に響いたが、すぐに静かになった。ソウタとセリスの二人で全員を瞬殺したのだ。


「なぁ、セリス」

「なぁに?」

「お前、炎系の魔法しか使えないのか?」

「他にもいっぱい使えるよ!」

「じゃあなんで炎系ばっかり使ってたんだ?」

「??燃えると苦しみにながら死ねるでしょ?」


何を言ってるの?という顔で見られた。え、俺の彼女恐い。


「さ、さぁアクアシティへ行こうか!」

「??おかしなソウタ」


おかしいのはお前だよ!って言ってやりたい。もしも俺がセリスを本気で怒らしたら……いや、考えないようにしよう。そう心に決め、アクアシティを目指したのだった。

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