第10話 クラスメイトside訓練開始

その頃、光たちはエギルと合流していた。


「エギルさん!無事だったんですね!」

「当たり前だ!この程度では私は死なんよ」

「あの、なんであんなにモンスター達が街に来たのかわかりましたか?」

「うむ」

「もしかして、山が吹き飛んだことと関係がありますか?」

「あぁ、よくわかったな」

「山を吹き飛ばしたのは誰だかわかりましたか?」

「知ってどうする?」

「山を吹き飛ばした奴に罪を償わせます」

「そんなことが光、お前にできるのか?」

「できます!」

「相手は山を吹き飛ばした奴だぞ?」

「はい!」

「お前に一度勝ち、私達全員を気絶させた奴だとしてもか?」

「え?」


この場にいる全員の目が見開かれ、絶句する。すると香帆がエギルに迫る。


「本当に黒輝くんがやったんですか!?」

「そうだ」

「ちゃんと本人に聞いたんですか!?」

「もちろんだ」

「そ、そんな…な、何か理由があったんじゃないですか?」


恐る恐る香帆がエギルに聞く。


「あぁ、そうだ。あいつはまさか、あんなにすごい威力がでるとは思わずにスキルを使用したんだ。その結果、山を吹き飛ばし、モンスター達が街になだれ込むことになった。そして、黒輝ソウタは責任を感じ、それの尻拭いとして、モンスターがでてきていた穴を1人で閉じた。罪ならこれで償ったと思わないか?みんな」

「「「「はい!」」」」


エギルがそう言うと、香帆と零と龍二と先生だけが賛同し、他のみんなは光の顔を見ている。光は自分の考えを頭の中でまとめているので、黙っている。そして、考えをまとめた光が言う。


「確かに、罪を償ったかもしれません。ですが!あいつのせいで死んだ人が何人もいるんです!それぐらいじゃまだ、完全に罪を償えたとは言えないと思います」


するとそれを待っていたかのように周りが賛同し始めた。すると、


「みんなおかしいよ!なんでいつも黒輝君を悪者にするの?今回のはただの不運な事故だっただけじゃない!」

「不運な事故?確かにそうかもしれない。だが本当にそうか?あいつが嘘をついてるだけかもしれないぞ?それに、死んだ人が報われないじゃないか!」

「そ、そうだよ?夏川さん。北神君の言ってることのほうが正しいと思うよ?」


クラスでは大人しめな子、里原 三鈴〈さとはらみすず〉。身長は152cmぐらいで髪は肩ぐらいあり、前髪は長い。そんな子が香帆に、勇気をだして言ったのだ。


確かに、客観的に見れば光が言ったことの方が的を得ている。だがしかし、ソウタがそんなことをするはずがないと、香帆は信じているので自分の意思を曲げない。


「里原さん、確かに光が言っていることが正しいかもしれない。けど、私は黒輝君を信じてる。黒輝君はそんなことしないって」

「香帆、思い出してくれ。お前が不審者に捕まっている時、あいつはなんて言った?」

「それは…」

「はい!もうお終い!みんな言いたいことはあると思うけど、今は話してる場合じゃないでしょ?早く街を復興させて、訓練しないと!」


これ以上言い合いになると、香帆もみんなから嫌われるかもしれない。そう思った零は話しを中断させた。そして、その零の言葉通りにみんなが街の復活のため、手伝いに行くことになった。


何グループかに分け、エギルや兵士の指示に従いながら作業を始める。その時に香帆が零にお礼をを言う。


「いつもありがとね零。また止められちゃった」

「気にしないでいいわよ。いつもことでしょ?あんたたちのケンカなんて」


そう二人で笑いながら作業を始めた。


そして何日かがたち、街は前のような姿に戻った。


「いやぁやっぱ魔法ってすげぇんだな!」

「そうね、あんなにボロボロだったのにもう元にもどっちゃうなんて」

「ほんとすごいよねぇ」


龍二と零と香帆の三人でそんなことを言っているとエギルがやって来る。ちなみに私達は今、リアの家であるお城に住まわせてもらっています。


「君たちのおかげで街がこんなにも早く元に戻ったよ。感謝するよ。さて、それではそろそろ訓練でも始めたいんだが、みんなはそれでいいか?」

【はい!】


みんなが声を合わせて答える。


「よし!それでは訓練を始める!まずは筋トレからだ!腕立て、腹筋、背筋、スクワットを男子は60、女子は30回ずつする。それを3セット行う!」

【はい!】


誰も文句を言わずに筋トレを始める。それが終わると、次はランニング。その次はまた筋トレ。それを毎日続ける。そうするとさすがに不満の声があがる。


「また筋トレかよー。いつになったら剣とか魔法を教えてくれるんだよー」

「ほんとにねぇ」

「俺たちはなんでこんなことしてるんだろな」


クラスの子達が文句を言い始めるとエギルが答える。


「それはまず身体を作らなければならないからだ!いくらスキルが強くてもすぐにバテてしまっては意味がないだろう?そのための身体作りだ。あと1週間これを続けたら、戦い方とスキルについて教えてやるから今はおとなしく言うことを聞いてくれ」

「そっかぁ」

「じゃぁ仕方ないねぇ」


そうクラスの子達が納得していると光がエギルの正面にくる。


「エギルさん。今すぐ俺に戦い方を教えてください」

「1週間後だと言っただろう。聞いていなかったのか?」

「俺は勇者だ。ならいつでも戦えるように準備をしていてもおかしくないはずです!」

「んー。確かにそうだが。」


エギルは悩み、答えをだす。


「いや、ダメだ。お前を特別扱いすると周りにも影響がでるかもしれない。だから慌てずに待っていてくれ」

「そうですか。わかりました」


光が意外にもあっさりひいた。エギルが言ったことのほうが正しいと思ったのだろう。


その後、光は訓練を終えると自室のベットで仰向けになり、


「俺は早く、あいつよりも強くなる!」


そう強く、心に決めた。

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