第9話 創造魔法

俺は今、95階層に行くための階段にいます。なぜ、次が95階層だと分かったかというと、看板に


《次が95階層です!100階層まであと5階層だね!なので門番を置いちゃった!倒しても一定時間が経つと元の場所で復活するようになってるから、気を付けてね!》


と書いてあったからだ。


「面倒だ。次の門番も。この人格者も。」


このテンションにはついていけない。はじめは堅苦しい奴だと思わせるような看板だったのに、今はそれを裏切るようなテンションで書かれた看板が目の前にある。俺は1度イラッときたので看板をへし折った。なのにその瞬間、へし折られた看板は時間を巻き戻すように直り、元あった場所にもどった。何度も繰り返したが、最後に折れたのは俺の心だった。


「門番なんて置かなくていいじゃないか」


そんなことを言いながらも階段を降りていく。すると、門番らしきモンスター達がいた。そいつらは人型のモンスターで5mぐらいあり、目は3つある。両手には大きな剣と盾を持っていてとても強そうだ。そんなやつらが3体いる。門番には相応しいだろう。そんなことを考えていると1体が消え、目の前に現れる。


「なっ!?」


俺はとっさに黒刀を引き抜き、モンスターの剣をいなす。いなされたモンスターの剣は地面に突き刺さった。その突き刺さった剣の風圧により、俺は後ろに吹き飛ばされる。


「まずいな。くッ!?」


また、いつの間にか目の前にいた三つ目のモンスターが俺を攻撃しようと剣を振りかぶる。それを高く跳び避け、反撃しようとする。だが、残りの2体のモンスターが俺に剣を振りかぶる。俺は反撃をやめ、それをいなすと、1度距離をとる。そして、


「限界突破、Lv3ッ!!雷切ッ!!」


限界突破と雷切を発動し、1体目を倒したと思いきや、盾でガードされた。


「なにっ!?」


スキルというのは、集中し、呪文をきちんと唱えることで威力の底上げが出来る。だから俺はさっき、自分の能力を限界まで上げるため、限界突破Lv3と唱えた。その次の雷切は、Lvを言わなかったのでLv1の時より威力が低い。だが限界突破を使用しているので、普段の時の雷切Lv3ぐらいの威力はでたはずだったのに、それを楽々止められた。


「けっこう強いじゃねぇか」


心臓がうるさいほど鳴っている。こんな時にワクワクしているのだ。生死を分けた戦いでワクワクする。そんなことは普通に暮らしていれば体験なんか出来ない。だが、ここは異世界。普通ではないことが今起きているのだと、改めて実感する。


「さぁ、俺を止めてみろよ!限界突破、Lv5!!」


俺の体から青いオーラが流れ出る。Lv1やLv3の時でもでていたが、その時はそんなに大したことない量だった。だがLv5になると流れ出るオーラの量が全く違った。それに伴い、力がどんどんあふれてくる。


「構えろ。だが、次は止められねぇぞ?」


俺はそう言い、居合いの構えをとり、スキルを唱える。


「雷切ッ!!」


三つ目のモンスターは盾を構えたが、雷切を発動した時の風圧で盾を吹き飛ばし、そのまま雷切が直撃し、三つ目モンスターは倒れる。


「さて、試してみるか。創造魔法とやらをな!」


俺は居合いのように構え、イメージし、唱える。


「神速ッ!!」


すると姿が消えた。三つ目のモンスターは辺りを見渡す。その後、1体が倒れる。もう1体は、何事だ!と倒れた味方の方を見るが、そこには倒れた味方しかいないと思った瞬間、視界がずれ、倒れた。


「ふぅ。なかなかいい技かもしれねぇな、あの技」


さっき使用した神速は、簡単に言うと、敵に見えないような速度をだす技だ。なので、三つ目のモンスターには俺が切りつけたことに気がつかなかったはずだ。


「さて、急いでこの部屋から離れるか」


そう呟き、限界突破を解くと身体中に激痛が走る。


「こ、これ、は。まず、いか、な?」


限界突破を使用すると全身がこんなことになるのか。と、反省しながら体にムチを打って次の階層への階段まで歩いていくと無事に階段まで着いた。


「はは。モンスターが復活しなくてよかった」


と安心していると看板が目にはいった。


《あの門番達を倒すなんてすごいねぇ!そして満身創痍になっている君に言いたいことがります!なんとあのモンスター達が復活する条件は、この階段まで来ることなのです!ごめんねぇ?頑張ってここまで来てくれたのにね!あはは!それじゃぁ100階層の奥の部屋で待ってるよ!じゃあね!勇者君!》


「ふぅ」


ガンッ!!という音が階段中に鳴り響き、看板が割れる。だが元に戻る。ストレスがたまる一方だ。


「ぜってぇぶん殴る」


そう心に決め、少し休む。そして、ザックに貰った回復するらしい水を飲む。するとかなり楽になった。戻ったらザックにお礼を言おう。


数十分後、俺は階段を下り始める。


96階層に着き、階段を探し始める。モンスターは俺に近寄ってこない。威圧を発動しているからだ。それも全力の威圧だ。なので階段を探しやすい。そこで見たことない鉱石を見つける。


《発光石 魔力を流し込むとすごい光を発する》


閃光弾みたいなものかな?と思い、回収する。そこであることに気付く。


「あ、神聖石がない!」


95階層で、三つ目のモンスターと戦うために置いておいたことを忘れていた。


「あ゛ぁぁぁぁぁぁ!めんどくせぇぇぇぇぇ!」


俺は神速を使用し、数分で95階層まで戻った。そしたらやはり、三つ目のモンスターが復活していた。そいつらを神速を使い、切りすてていく。


そして、神聖石を回収し、下の階層へ向かおうとすると上から看板が降ってきた。


《君、なにやってんの?あまり私の迷宮で遊ばないでくれる?》


それを踏み割ると、今度こそ下の階層へ向かう。ていうかどうやって俺のこと見てんだよ!それに、この看板ってやっぱり魔法の類だったのかよ!


数時間後、俺はようやく99階層への階段を見つけた。そこにはまた、看板があった。


《君、1人ですごいねぇ!うんうん!とても面白い!だから99階層と100階層に君の試練になりそうなモンスターを置いておいたよ!頑張って倒してね!あ!もしも死んでも気にしないでいいよ!モンスターが食べてくれるからね!じゃぁ頑張ってねぇ!》


「あんま俺のこと、舐めてんじゃねぇよ」


そう言うと看板が降ってきた。


《別に舐めてないですぅ〜》


俺はもう看板に反応しない。絶対に反応しない。また心に決めたことが増えるソウタであった。

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