第4話 ブラックフォレスト
「そういえば彼、後で大迷宮のことも教えてくれって言っていたが大丈夫だろうか?」
そう考えるとザックの顔は蒼白になっていく。
「まずい!早く彼に知らせなければ!いくらステータスが高くても何も知らなくては死んでしまうかもしれない!」
ザックは慌てて黒輝の後を追ったがそこにはもういなかった。
その頃ソウタは考え事をしていた。
「このスキルの覇王と希望のオーラを使うとどうなるんだ?」
これを今すぐ使いたいのだが、相当危険な状況に使う奥の手にしよう!と決めるソウタ。
やはり男の子。こういう最終手段をもっておきたいものなのだ。
そんなことを考えているとダークフォレストの前に着いた。
「さてと、ガイルさんとやらを探しますか!」
ノリノリでダークフォレストに入っていくソウタ。そして数秒もしないうちに獣の鳴き声が鳴り響く。それは悶え苦しむような声だった。
そしてその声が収まりソウタは思った。
『すごく弱いじゃん!!あと前が見にくい!!』
ダークフォレストなだけあって視界はものすごく悪かった。簡単に言うと暗闇に包まれた感じだ。目の前の木ですら、手で触れるような距離まで行かないと見えない。おそらく、この視界の悪さの中で敵を殺せということだろう。だがこの暗さでも敵が弱いと意味がないんじゃないか?と本気で思っているソウタ。
「まぁいいか。早くガイルを探そう」
1時間ほど歩き回ったが見当たらない。それもそうだ。この暗さでは人1人見つけるのも至難の業だ。
「適当に誤魔化すか」
はぁ、とため息をついたその時、
「だ、だれかぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇぇ!!」
男の者と思える声で大声を上げながらこちらに走ってくる。そして、その後ろからスキルである敵探知に、ものすごい数のモンスターが来ていることが分かる。
ソウタの決断は速かった。
「こっちだ!早くこい!ガイルのおっさん!」
まだガイルである確証はないが咄嗟に名前を呼んだ。声が聞こえればこちらに来ると思ったからだ。その結果、ソウタの思惑通りに男性が走ってくるのがわかる。
「ほ、ほんとにだれかいるのか!?頼む!助けてくれぇぇぇぇぇ!!!!」
「なら、早くこっちに来い!」
来るべき方向を教えるために俺も大声をあげる。男がすぐ近くに来たことがわかった瞬間、その手を掴み俺の後ろに隠す。
「あ、ありがとう!お前は俺の命の恩人だ!」
「あぁ、礼ならザックに言うんだぞ?」
「な、なぜザックのことを!?」
「その話しは後にしよう」
そう言い俺は雷切の構えをとる。雷切は剣を持ったときに使える技だ。なので、錬金術で簡単な剣を作って置いたのだ。もちろん1度きりの使い捨てだが、結構な威力はでるはずだ。
俺はワクワクしながら呪文を唱える。
「雷切、Lv10ッ!!」
視界が白くなりその後にズドォォォォォンとすごい音が鳴り響く。視界が戻ると自分の現状を把握した。
「やっちまった...」
そう、本当に誤算だった。まさか山ごと消し炭になるなんて誰がおもう?
「まぁ視界も明るくなったし、アリだな!」
「.........」
男は絶句していた。当たり前だろう。自分のことを追っていた暗くて見えないモンスター達が山ごと一緒に消えたのだ。驚いてしまうのも無理はない。
「よし、帰るか!」
俺は気楽にそう言うと男の手を掴み先導するが、その男ははまだ現状が把握できていないので肩に担ぐことにする。そのままギルドに向かう俺と担がれた男。周りからの目が痛いが、そんなことより気になることごあった。
「この人がガイルじゃなかったら絶対死んだじゃん...」
俺は心の底からこの人がガイルであることを祈った。
そしてギルドに着いた瞬間、
「君はいったい何をしたんだ!!」
「な、なんのことでしょう?」
と明後日の方向を向いて誤魔化そうとしたが、
「なんのことでしょう?じゃない!どうすれば山ごと森を吹き飛ばすなんてことになるんだ!」
「あーっ!!もういいだろ!ほらっ!この人がガイルだろ?よく見ればロケットしてるし!仕事はこなしたんだから早く報酬をくれ!まだその話しを続けるなら今度はこの街を吹き飛ばすぞ!!」
「この男無茶苦茶だ!だが感謝する!」
ザックは、そう言うとガイルに近付き、
「このバカガイルが!一歩間違えたら死んでいたんだぞ!今回のことでよくわかっただろ!」
その言葉によりガイルはようやく現状を把握したみたいだ。
「あ、あぁすまない。お前の言う通りだった。俺なんかじゃあそこのモンスターに手も足もでなかった。この人が来てくれなかったら本当に死んでいたんだ。ありがとう」
ガイルは俺に礼を言ってくる。
「礼ならザックに言えって言っただろ?こいつ、お前のことをすげぇ心配して俺に依頼として頼んだんだぜ?」
「ほ、本当か?俺のためにそこまでしてくれたのか!?」
ザックは恥ずかしそうに頭を掻きながら、
「あぁ、そうだよ」
だけ言った。ガイルも恥ずかしそうにしている。なんなんだ?このガタイのいい男2人が恥ずかしがっている空気は?気持ち悪いんだが。そんな空気に耐えきれなくなった俺は急かすように、
「早く報酬をくれ」
「あぁ、すまない。すぐに用意しよう。2人とも中にはいってくれ」
カウンターの奥の部屋で少しのあいだ待つことになった。初めての報酬だ!と内心ではすごく喜んでいる俺。だが顔にはださない。顔にだすと童顔のせいで、すごく子供っぽく見えるからだ。
そしてようやくザックが戻って来た。手に重そうな袋を持っている。きっとあれが報酬だろう。
「これが報酬の金貨500枚だ」
「金貨?どれくらいの価値があるんだ?」
【は?】
2人揃って俺を見る。しょうがないだろ。この世界に来たのは3時間前なんだから。
そう思っているとザックが、
「もしかして君は神が連れきてくださった方だとは言わないか?」
「なんで知っているんだ?」
ザックは目を見開く。ガイルはポカンとしている。その行動で推測する。ザックはギルドの責任者であるから、リアから話を聞いていたのだろうと。
「そ、それは、王女、から」
やはり正解だった。だがそんなに驚くことか?
「ほ、本当に感謝する!君がこの世界に来てくれたことに感謝する!わからない事があったら何でも聞いてくれ!あぁそうだ!金貨500枚あれば城を1つ建てられるよ!」
なんと!俺はそんなにもらったのか!とニヤけそうになるのを堪える。
「そんなにもらえる依頼だったのか?まぁ貰えるものは貰うが。それと、大迷宮のことについて教えてほしい」
「今回はブラックフォレストごと吹き飛ばしてくれたからね。他のギルドに連絡して報酬を決めたんだ。大迷宮についてだね。私もあまり良く知らないんだが、今回君が行ったブラックフォレストは周りが暗くて見えにくかっただろ?これと同じように他の大迷宮にもそういう特殊なギミックがあるはずなんだ。あと、大迷宮は全部で9つの場所にあると言われている。すまない、私はここまでしか知らない。」
「そうか、教えてくれてありがとう。あと、どこかいい宿を教えてくれないか?」
「そんなことなら奥の部屋に泊まるといい。腹が減ったら酒場ででも食べてくれ。ガイル!俺たちは久しぶりに飲もう!」
「おうよ!」
楽しそうだなと思いながら俺は奥の部屋に行く。案外広くていい場所であった。ベッドの上で寝転ぶとすごい睡魔が俺を襲う。異世界転移をし、今までずっと動き続け、色々試したのだ。疲れるのも当然だ。
そして俺はさっきまでに起こったことを振り返りながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます