🐈

 結局、タマゴの人語をあの日以降耳にすることはなかった。見かける猫達も悠希に見向きもしない。やはりあれはあの日だけの、短い魔法の時間だったのかもしれない。とはいえ、世話をするようになった悠希にタマゴが攻撃を仕掛けてくることは一切なくなった。最近では、餌を上げる時に悠希の顔を見て、渋くも何ともない声で「なごお」と鳴くようになった。それが何を意味するのかはわからない。相変わらず距離は縮まらず、懐いてくることは一切ない。それはまあ、いつものこと。家族には甘えて、自分には甘えてくれない。ただ、小さな変化はあったりもする。


 ――悠希がお気に入りの縁側で昼寝をしているとタマゴが近くで寝そべってきた。そして、たまにタマゴはチラッと悠希を見てくる。それに対して悠希は「何よ」と返した。タマゴは腹を見せて背伸びをして、それを見て悠希は口元を緩ませる。二人で寝そべり、昼寝を続ける。


 これが悠希とタマゴの、新しい日課だ。



『新しい日課』了

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新しい日課 黛惣介 @mayuzumi__sousuke

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