第35話 メンバー集め


とは言え後、二人か。アルゲールくんの性格を考えると割と巧妙に隠れていて探すのが大変そうだし、リトちゃんの所在も分からない。下手に動き回ってハピーちゃんに見付かっても厄介だしな…。ルルちゃんとアイちゃんはどこに隠れてるんだろう?


きっと一緒に隠れているだろうから、見付けられたらまさに一石二鳥なんだけどなー。


「石田先生!ルルとアイなら、さっき通ったぞ?」

「そうなの?ドランくん。どっちに行ったか分かるかな?」

「んー。多分、いつもみんなでご飯食べてる場所じゃないか?」


食堂か。

僕は3人をお城の中に置いて、食堂へと二人を探しに行く事にした。


「なんだか僕が勇者みたいだな。」


別に説得も拷問も出来ないけれど、みんなを探している僕の方が魔勇隠れんぼの勇者みたいだった。


「ルルちゃーん、アイちゃーん、いるー?」


食堂に入った僕は、ハピーちゃんがいない事を確認しつつ小さな声で呼び掛けた。


「「あ、先生。」」


奥から静かに出てきた二人は僕に駆け寄ると、生きているのを確認するかの用にペタペタと僕の身体を触った。


「「生きてたのね、先生。」」


そして怪我の無いことを確認すると、そっとその場に座り込んだ。まさか園児に生死を確認されるとは後にも先にも思ってもいなかったけれど、とりあえず僕は無事である。


「いやー、開始10秒ぐらいで捕まったんだけどね。ジムくんとタロくんが助けに来てくれて。」

「「そうなの?先生って意外におドジさんなの?」」

「んー、ドジと言うか甘く見てたと言うか…。」

「「じゃあおバカさんなの?」」

「うっ………。」


かなり胸に突き刺さるお言葉である。それも当社比2倍。


「まさかハピーちゃんがあそこまで強敵だとは思って無かったんだよ。僕は遊ぶの初めてだからね。」

「「確かに。」」

「ルルと」

「アイも」

「「初めて一緒に遊んだ時はビックリしたわ。」」


そう言えばルルちゃんとアイちゃんは、ゴブリン谷でみんなと魔勇隠れんぼをする前に、一度ハピーちゃんと遊んでいたんだよな。


あの時は悔しかったと話し合う二人に、僕はなぜ食堂に隠れているのか聞いた。


「「それは…」」

「「ハピーはここの食べ物に興味が無いから」」

「「場所なんて忘れてるんじゃないかな、と思って。」」


ハーピーと言う種族である彼女の主食は、主に木の実やワームだ。それらはこの食堂や給食室には無い。なら忘れていても当然。覚えなくてもいいのだから、きっと記憶に無いだろう。


記憶に無いのなら、探しに来ることも出来ないはずだ。


「賢いね、二人共。」


流石はハピーちゃんと二戦ほど交えただけはある。伊達に負けた訳じゃないと言う事だろうか。


「「えっへん。」」


小さく胸を張る彼女達を、僕はとても頼もしく思った。


ともあれこれで魔王軍は7人揃ったのだ。


僕達7人は食堂へと移動し、作戦会議を開いていた。グラウンドから戻ってきたタロくんは依然として無言だったけれど話し合いの結果、陽動係はタロくんに決まった。


前回のゴブリン谷での遊び(戦い)の時も、タロくんは陽動係だったみたいだし。今回も僕を助けるために、見事ハピーちゃんの気を逸らしてくれた。自由自在に土の中を移動出来るタロくんにはもってこいの配役だろう。


「罠作りは俺様に任せろ!」


と、ジムくんは食堂の奥でハピーちゃんを捕まえる罠を作り始めた。ジムくんのご両親は鍛治職人らしく、その手先の器用さを彼も受け継いでいるのだろう。腰のポシェットから何やら沢山の工具を取り出し、テキパキと罠作り作業に取り掛かった。


「さて…後はドランくん、ベンヌくん、アイちゃん、ルルちゃん…そして微力ながら僕、と。」

「せんせー、レイミアせんせーは探さないのー?」

「レイミア先生か…。それはハピーちゃんを捕まえるより難しいかも。」

「そりゃそうだ!なんたってあの人は魔王軍第二騎士団の騎士団長なんだからなっ!」


ドランくんはまるで自分の事のように誇らしげにそう言った。元、だけれどね。それにしなくても、彼女を見付けるのは不可能に近い。


「僕達は、今回このメンバーで作戦を遂行せざるを得ない。」


僕は残った4人の顔をそれぞれ見る。


力自慢で戦闘向きのドランくん、不死身でのんびり屋のベンヌくん、素早く活発なルルちゃんとアイちゃん。割といい線いってるメンバーのように思える。もちろん作戦実行中に他の子を見付けられれば万々歳だ。


「それで……作戦の内容なんだけど………

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