第3話 書類選考は勘も大事
「魔王様。この御方は?」
「
「魔王様。この御方は?」
「
「魔王様。この御方は?」
「
夕食時、意気揚々と側近が提案して来たのは他の世界から戦いでは無い、教育のプロフェッショナルを呼んで来る。と言うのもだった。
この世界にも教育の場所はある。勿論、魔王軍にもだ。ただ、そこは戦い方や殺し方を教える場であって、子供達の教育上よろしくは無い。幼き時はもっと他に覚える事や体験すべき事があるだろう。
戦いや殺しを覚えるのは、そんな基盤が出来てからである。かと言ってこの世界の人間に我が幼魔族や魔物の教育を託す訳には行くまい。と言うか戦争をしているのだ。誰も引き受ける訳が無い。
そこで、ここでは無い別の世界。異世界である。
側近がどうやってこれ程までの履歴書?とやらを集めたのかは分からないが。んーーーどいつもコイツもパッとしない。全員纏めて却下したい。側近に怒られるからしないけど。悩んでいるフリでもしておくかー。
「魔王様!困ります!」
おっと、フリがバレたのか?
「あーだ、こうだと好き嫌いで却下されては困ります。ちゃんと学歴や職歴、備考などを見て、適正と素質を見極めた上で判断を下して頂かなければ。」
「側近…お前、面接官みたいだな。」
もうコイツが決めた方が間違いない人材を選べるんじゃないだろうかと思える程の熱の入れっぷりである。我は要らぬのでは?
側近はその後も、この御方は?この御方は?と履歴書とやらを回して来た。もう、この御方は?にゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。ついでに側近にも崩壊して欲しい。
仮にも魔王の夕食時だぞ?
「あーーーー!もうこいつだ!こいつ!こいつで決まりだ!こいつ意外に考えられない!こいつの他は有り得ない!」
テーブルの上、一番近くにあった履歴書を人差し指を動かす事で浮かせ、側近の顔に張り付けてやった。もごもごと口籠もっている。やっと静かに夕食が食える。
「わっ!ちょっ!もう!……どれどれ」
側近は履歴書を顔から引っぺがし、そこに書かれている文字を読み上げた。
「
う、うむ。当たり前だ。動揺を隠しながらのスープは美味である。
「早速明晩、石田殿を御迎えに上がると致しましょう。」
側近は何度か頷き、他の履歴書を手から出した炎で焼き消すとやっと食堂から出ていった。あいつ、酷いな。なにも焼き消さなくても。
石田希月、か。
側近が納得したみたいで良かったが…まぁ散々履歴書を見させられた我が思った事と言えば、我もなんか名前とやらが欲しいな。だけであった。
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