第2話 就職活動は慎重に


僕は昔から子供が好きだった。そうなれば進む道は一つだろう。


「合格おめでとう、石田くん。」


僕は高校を卒業後、3年程アルバイトをしながら養成学校に通い、この度見事!保育士資格試験に合格した。


これから晴れて保育士である。さて何処に履歴書を送ろうかと、養成学校の掲示板に張り出されている求人募集のポスターを眺める。


"はとば保育園 保育士募集!一緒に楽しく園児とエンジョイ!"

"ななみ保育所 働く親御さんの味方になれる保育士さん募集!"

"すみゆり幼稚園 洗練された校内で洗練された自動育成"


「んーーー。」


その他にも掲示板狭しと並ぶ、保育士募集の張り紙達。でも何だかどれも僕の中でピンと来ない。選んでいる訳では無いのだけれど、やっぱり初めて働く場所というのは重要だと思う。


どうせなら僕が必要としているのは勿論、僕を必要としている場所で働きたい。


「ん?何だろうここ。」


僕は掲示板をつらつら見ながら、一番端に張り出されていた保育士募集の張り紙を手に取った。


"プロフェッショナル募集"


ただそれだけ。黒い紙に白字で、ただそれだけ書いてあった。右下には"履歴書を書いて頂ければ、こちらから取りに伺います。"とこれまた白字で記載されていた。


「何か奇抜な募集方法だな。」


僕はその奇妙な募集広告を折り畳み、鞄に入れて帰った。何となく、本当に何となく気になったのだ。僕が保育のプロフェッショナルだとは言えないが、プロフェッショナル募集とだけ書かれたその不思議な張り紙にとても惹かれた。


それに"履歴書を書いて頂ければ、こちらから取りに伺います。"と言うのも気になる。どのタイミングで僕が履歴書を書いた事を知り、いつどうやって取りに来るのか。割と不可能に近くないか?

そんな疑問を抱きながら僕は家路についたのだった。




テーブルの上に書き終えた履歴書を何枚か並べ、僕は一息ついて紅茶を啜った。何枚か持ち帰った張り紙を順番に見ていきながら、未来の僕に思いを馳せる。


明るく清潔な園内。少し小さめの遊具達。初めて受け持つクラスの可愛い子供達。卒園式では涙なんか流したりして。


おっと。就職もまだ決まっていないのに卒園式を経験してしまった。

取り敢えずは書類選考からの面接があるだろうから、明日散髪にでも行こうかな。僕は伸びきった前髪を少し触りながら考えた。


そうとなれば早寝だ。僕は養成学校から取ってきた保育士募集の張り紙達と、書いた履歴書を重ねて机に置き、いそいそとベッドに潜り込んだ。

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