△
自分の意見を言うことが恐かった、というのは小学校の頃から変わっていない。意見があったとしても、基本的に周りに合わせてきた。自分が何を発しようと、物事はきちんと動き、進み、解決するもの。自分が前に出ることで、変な空気になるのが極端に恐かったのだ。トラウマがあるわけではない、もはや自分の性格だった。おかげで、今のなつめは疲労困憊、志望校だった大学に入学できたというのに、キャンパスライフは息苦しくて仕方ない。
入学してしばらくは新しい環境ということもあって緊張しながらも新しい友人関係に胸をときめかせていた。しかし、しばらくして、悪い癖が出始めた。好きでもないカラオケ、雑音だらけで頭が痛くなるようなゲームセンター、よく知りもしない男性との合コン、話を合わせなければならないと興味のないジャンルに手を伸ばし、必死に周囲とのズレを極力出さないようにしてきた。小中高まで何とか耐えることができたが、遊ぶ幅が広がったことや『大人に近付いた』という高揚が蔓延し始めるこの時期は、『周囲に合わせる人間』にとって苦しみ悶えるしかない、苦痛の時期だった。限界は――あと少しのところまで迫って来ていた。
今日はその息抜き、そのつもりで登山をしに山を目指したはずだった。だが、今日のなつめの調子は最悪な状態、気分の悪さが抜けきれないでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます