第6話再びフィリアと

・ギルドカードは身分証。紛失し再発行する場合は一万Gかかる。

・ギルドではF〜SSSまで冒険者をランク分けし、自分のランクより一つ上まで受けられる。(Fランクは12歳まで、それ以降は自動的にEになる。)

・ランクが上がると依頼の難易度も上がり、報酬もそれに見合ったものになる。

・Cランクからは一つランクが上がる事に試験がある。

・生産、商業を行う場合、商業ギルドに登録しなければならない。尚、カードはギルドカードを併用できる。

・犯罪行為を犯した場合、自動的にギルドカードに記載され、全てのギルド及び騎士団に連絡が入り捕獲又は討伐対象となる。

・魔物討伐数、種類、クエスト達成は自動的にギルドカードに登録される。

・一定数クエスト失敗するとランクが下がり、上がりにくくなる。


「・・・とまぁこれがギルドの基本的なルールだ。犯罪者じゃなく、これに同意できれば誰でもギルドに登録することが出来る。もちろん普通は試験を突破してからだがな。どうだ?理解できたか?」


・・・すげぇ、このおっさん説明を噛まずに一呼吸で言い切った・・・。

ギルドはどうやら何歳からでも登録可能らしい。

しかし12歳以下は例外なくFランクから始まり、Fランククエストは町の清掃や町の人達の手伝いが主らしい。

流石にこの年齢に危ない魔物の討伐はさせられないか・・・。


「・・・うん。大丈夫だよ。」

「マジかよ・・・。この子本当に5歳児か?俺の子共なんて5歳の時はまだ本も読めなかったぜ?」

「ふふ。だから説明したでしょ?この子は天才だって。」

「ああ、確かにそうかもしれねぇな・・・。」


俺はそんな二人の世間話を聞きながら、ジルが棚から持ってきた丸い球に手をかざすよう指示された。

それに手をかざし魔力を流すと、どういう仕組みかガラスの玉は軽く光りガラス玉から1枚のカードが出てきた。


「・・・よし、大丈夫だな。これで今日からお前さんもギルドの一員だ。」


カードには俺の年齢、性別、ランク、クエストの記録などが記されていた。

・・・全く本当に便利な世の中だな、こんな魔法が現代にあったらカードの詐欺などはできないだろう。


「・・・ねえ、子のガラス玉は誰が造ってるの?」

「ああ、これはな、古代魔法時代の代物で、造ったのはフィリア様なんだ。まぁ神器と呼ばれる代物だな。・・・坊主は古代魔法時代を知っていているか?」

「うん。本で読んだよ。1万年前の魔力爆発があった前の時代でしょ?」

「そうだ。物知りだな坊主は。その時にフィリア様が人間の生活をより豊かになるために造ってくださったのがこれだ。他にもあるがそれらは全て魔力爆発でも壊れず残っていて、今では神器なんて呼ばれているんだ。」


神器、ゲームなんかでは最後の方に出てくる凄い武器なんかがそう呼ばれていたな。

・・・まさかこんな序盤でお目にかかれるなんて・・・。

その後俺たちはノアの所に行き、ギルドカードを作ったことを報告、ノアと共にギルドに行きノアからの依頼を受けることになった。

依頼内容は週に4日間、午後の1時から5時までノアの手伝いをする、と言うものだ。

その後俺たちはノアとも別れて帰宅した・・・。


それから俺は午前は父さんに剣の稽古をつけてもい、午後には母さんに中級魔法から教えてもらった。

どちらも俺にとっては新鮮で楽しく、毎日が充実していた。

父さんは剣に対しては真剣だしかっこいいが、偶に5歳児に話すか?と言う内容の下ネタを話してくるのが残念だ。

母さんは魔法に詳しく教え方もとても丁寧で俺はどんどん上達していった、が俺が少しできるようになるとすぐに抱き着いてくるほどの親馬鹿なのが残念だ。

どちらにしろ俺はとても大事に育てられ、すごく充実した毎日を過ごしていた。


妹のミアも少しずつ成長し、最近ではハイハイも出来る様になってきた。

俺と父さんはミアの世話をするのが苦手でよく二人でミアを泣かせていた。

そのたびに母さんが怒り俺と父さんは何度も氷漬けになりかけた。


俺は心の底からこの日二人を尊敬していたし愛していたが、どうしても心の底から本当の両親だという認識できなかった。

どちらかと言うと父さんは色々教えてくれる悪友か先輩のような感覚で、母さんは面倒見のいいお姉さんだ。

これには残念ながらどこか前世の両親が俺の中にいるからだろう。

あんな奴らでも、たとえ殺されても俺にとっては親であり、家族だった。

その矛盾が折れの中にはあり、俺はどうしていいかわからなかった・・・。


「・・・よく来たの。それじゃあ今日からよろしく頼むよ。」

「うん。よろしく。


俺は次の週、教会に行きノアの手伝いをすることになった。

手伝いと言っても内容は簡単で、ノアに光魔法を教えてもらいながら怪我をしてきた人をひたすら治療するというものだ。

魔法は使えば使うほど上手になる。

まずはやってみなくては分からない、と言うのがノアの持論らしい。

俺は言われたと通りに怪我をした人が来たら初級の光魔法「ヒール」で直していった。

俺に治せなさそうな怪我はノアにやってもらい、二人での二人三脚の治療が始まった。


「・・・ふむ、どうやら今日はここまでのようじゃな。チャールズよ。疲れてないか?」

「うん。大丈夫。まだいけるよ。」

「そうか・・・。末恐ろしいくらい魔力の量が多いのじゃな。やはリリーの血か・・・。まぁ最後に二人で今日も無事に過ごせたことをヒィリア様に報告しよう。」


まぁ俺の魔力量はオカマ女神のおかげだけどね、と言おうとしたのを俺はぐっと堪えた。

これは神父の日課らしいが、朝に一回、夜に一回フィリアに今日の無事を報告し感謝する習慣があるらしい。

俺はノアの真似をして片膝をつき祭壇の奥にある、誰だかわからない美しい彫刻に祈りを捧げた。


「ちょっと~、誰だかわからないなんてひどくなぁい?あれは私そのものをかたどった像じゃない。」

「・・・へ?」


俺は気づけば「アース」に来る前のフィリアの場所に立っていた。


「それに~、報告に来るの遅いんじゃない?私心配で心配で心肺停止するかと思ったじゃな~い!まぁ私に心臓なんてないんだけどね!!がっはっは!」


いきなりわけのわからない事を言っているマッチョ女神が目の前にいた。


「・・・ねえ、何で俺はここにいるの?もしかしてまた死んだ?」

「ちっがうわよ~。教会でお祈りしたでしょ?協会ってのはね、私の力が大きくかかわっている場所なの。だから貴方がお祈りに来たらいつだって私に会えるって寸法になってるわけ!」

「・・・つまり2度と教会に近づかなければいいわけだね?」

「辛辣~!!そんなこと言わないでさ。どう?私の「アース」は。いい感じ?」

「いい感じがどんな感じかは分からないけど、でも楽しいよ。フィリア・・・様の言ってた通りにすごくいい家庭だし、いい環境だと思う。それに魔力量が多かったり魔法が無詠唱で使えたりとかいいことだらけだしね。」

「そう。なら良かったわ。でも無詠唱や魔力量が多いのは貴方の努力の成果よ?」

「そうなの?」

「そう。魔法ってね、いっちゃえばイメージ力なの。どれだけ魔力を上手くコントロールしてイメージし具現化するか、それに尽きるわね。だから「詠唱は理」なんていうでしょ?それにほとんどの人が小さいころから詠唱を当たり前のようにしちゃってるから言葉とイメージがくっついちゃって、その言葉を発しないとうまくイメージできなくなってるの。だから無詠唱が少ないってわけ。それに魔力量だって、貴方小さいころから魔力で遊んでいたでしょ。いないわよ普通。赤ちゃんの頃から魔力で遊ぶ子なんて。だから多いのよ。」

「でも俺は初めから多くなるようにしてもらってるんでしょ?」

「多少はね、でもほんとに多少なの。5歳児が1日中回復魔法を使って倒れないなんて前代未聞よ。」


確かに俺は小さいころから魔法があることが嬉しくて色々遊んでいた。

「身体強化魔法」だって小さいころから使えたし、・・・まぁまだ小さいが、それに魔法を使っては眠り、魔法を使っては眠りを繰り返し、常に魔法を使っていた記憶はある・・・。


「ふふ。どうやら心当たりがあるようね。まぁそう言うことよ。まぁ今はかなりいい環境にいるし、それに魔法を教えてくれる人達もいる。今はとにかくそれを楽しみなさい。そして好きなだけ大人に甘えなさい。それが許されるのは子供のうちだけなんだから。」

「・・・そうだね。でも、俺なんだか両親の事心の底から親だと思えなくて・・・。」

「そうねぇ。そればっかりは心の問題だから神でさえどうすることもできないけど・・・。とにかく、自分に素直になってみなさい。」

「・・・素直に?」

「そう。貴方はまだどこか心の中で遠慮しているのよ。家族にも周りの大人にも。でもね。さっきも言ったけど、子供は甘えて、迷惑かけてなんぼなの。それは大人も嬉しいし、迷惑かけてもらった方が安心するのよ。ほら、地球では「手のかかる子ほど可愛い」なんていうじゃない?貴方は前世の両親をまだ引きづっている。別に引きづることは悪くはないけどそれに囚われることはよくないわ。昔は昔。今は今。まずは貴方から動かなきゃ、心は変わらないわ。」


俺は・・・、無意識に遠慮しているのだろうか・・・。

確かにどこか、俺は本当の子共じゃないという意識がある。


「貴方は本当の子よ。本当にあの二人から生まれた子供なの。ただちょっと前世の記憶があるだけ。それだけで、あとは他の人と何ら変わりはないのよ。だから安心して楽しみなさい。新しい人生を。」

「・・・うん。そうしてみるよ。ありがとうフィリア・・・様。」

「ふふ。もう言いにくかったらフィリアでいいわよ。貴方と私の仲じゃない。」

「なんかその言い方誤解を生むからやめろ。」

「もう、冷たいんだから、あ、そろそろ戻った方がいいわね。じゃあね、貴方が望めばいつだってここには来れるようになってるから・・・。」


俺は意識が薄れていく中で最後の言葉を聞きながら、気が付けばさっきの教会にいた。

隣ではちょうどノアが祈りを終えたところで、時間はそう長くは経っていないようだ。

俺は祈り終わったノアに手を引かれながら帰宅した。


そんな生活をしながら1年が過ぎていった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る