エピローグ
ジャパリパークのキョウシュウエリア。
ここにはとてもとても仲の良い夫婦がいた。
もう二人には会えないけれど、その息子や娘、更には孫だっている。
二人は確実にここにいたのだ、まるで伝説みたいな存在になってしまいおとぎ話のようにも聞こえるが。
二人はここで出会って愛を育み、やがて家族を作り…。
そして消えていった。
家族はよく不思議な体験をしたそうだ。
まるで夢でもみてるような体験。
ある時は過去へ、ある時はまったく知らないとこへ。
知っているのに知らない人に会い、知らないはずなのに知っている人にもあった。
まだ語られていないがいくつもの夢がある。
猫の家族は夢みる。
きっと今もそう。
猫はしばしば夢を見るのだから。
「君、もしかしてセーバルちゃん?」
「クロ、立派になったね?」
「やけに火山が騒がしいと思っていたのです、何かあったのですね?四神スザク…」
スザクはセーバルを連れ図書館に降りた。
シロとかばんのことを責任を持って伝えねばならないからだ。
セーバルを見たクロユキは驚くよりも先に懐かしいといった気持ちが溢れた。
彼にとっても思い出深いであろう、例の病気の時のこと。
その時ほんの少しだけ会話しただけのセーバル。
彼はそんな彼女との再会を果たした。
一方そんな彼の妻ワシミミズクの助手。
彼女は同様に現れたスザクを見たとき、帰らない二人のことをなんとなく察していた。
「島長よ… あの二人は…」
「火山に、いるのですか?」
「…そうだ」
スザクとセーバルは話した。
二人に何があったのか。
何故自分達が自由の身になれたのか。
「パパとママが…」
「クロ、ごめん… セーバル達のせいで」
「いや、セーバルちゃん達が悪いとかじゃないよ?パパ達はやりたいからやったんだと思うから… また会えて嬉しいよ?スザクちゃんも、自由になれてよかった」
あの二人が成し遂げたことを残った家族に伝えた時、スザク達も怨まれるであろう覚悟を持って話していた。
だがそんなことはない。
ちゃんとわかっているのだ。
シロが反対を押しきり自ら始めたであろうことも。
二人は一緒にいるからきっと寂しくなんかないってことも。
「せっかくだから家族と会っていってよ?セーバルちゃんも紹介したいし、娘のミユは口が悪いけどいい子だよ?息子のヒロは逆に礼儀正しいけどものをハッキリ言うんだ?失礼があったらごめんね?
新しい博士もしっかり長やってるんだ?そうだ!ユキ達にも来てもらうよ!それから平原のライちゃんにヘラちゃんも!あとは… とにかく歓迎するよ?今日は僕がご馳走する!せっかく自由になれたんだ?お祝いにしよう!」
確かにクロユキも両親が消えたことは寂しい。
しかし悲しむのは違う、だからお祝いをする。
家族みんなで、これまでパークを守ってくれたセーバルとスザクの新しい門出を祝う。
「あなた達がクロの子供達?初めまして、私はセーバル」
「初めましてセーバルさん?ヒロユキです、気軽にヒロと呼んでください?」
「あ~… ミユキだ、ミユでいい」
彼等の孫に当たる二人も、セーバル達を歓迎している。
祖父達の救った彼女達を迎え入れる、きっとそれがあの二人の願いと知っているから。
「二人共やっぱりクロの子供なんだね?よく似てる… でもヒロはクロより背が高いね?スラッとしてて、シロより素敵」
「ぇあっ!?そ、そーですかぁ?いや照れるなぁ~?」
「なにデレデレしてんだ~?だらっしねぇ顔…」
「ミユはどことは言わないけどかばんとそっくりだね?」
「どこのことか言ってみろよ緑のねーちゃん?」
「お、落ち着いてくださいミユ!」
白猫の残したものは、未来へ繋がっていく。
未来だけではない。
きっといろんな場所へ繋がっていく。
おわり
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