第17話 むずかしい問題
問1.かねてより噂になっていた男女が、この日揃って学校を遅刻しています。このとき、それを受けての周囲の反応は、一体どうなるでしょうか。
なお、男女は二人とも普段から遅刻や欠席の頻度がとても低い、比較的模範的な生徒とします。
問2.この場合、問1の男女の取るべき適切な行動は、次のうちどれになるでしょう。
ただし、二人とも意図して遅刻したものではなく、何らやましいものは無いとします。
a.急いで学校に向かい、遅刻の理由を正直に話す。
b.学校には向かうが、遅刻の理由は嘘をつく。
c.学校に仮病の連絡を入れ、今日は休む。
d.学校には何の連絡もせず、無断で欠席する。
「……それは、その選択肢のどれを選んだとしても詰みじゃない?」
「だよねっ……!」
肉体の異常を感じてか、あの後すぐに”目覚めた”生駒くんが、わたしの苦悩にトドメを刺す。いや、最初から手詰まりなのは分かっていたのだけれど、どうしても目の前のどうしようもない現実から目を背けたくなってしまうのが人間というものだ。逃げたっていいじゃない、人間だもの。
けれど現実逃避に奔るそんなわたしに、生駒くんは特に呆れるでもなく疑問を投げかけてくる。
「それ自体の是非を問うつもりは別にないけど……現実問題どうするの? ていうか、それって僕ら二人が揃って行動する前提だから発生する問題なんだし、時間ずらして別々に登校するとか、どっちかだけ休んでどっちかだけ学校行くとかにすれば――え、何? いや、急に鈍いとか言われても困るんだけど……え、及川さんもなんでそんな表情してる、の……?」
「……………」
……………………………………。
「え、何、二人とも……僕、何か言ったかな……?」
「……いこまくんの、ばか」
「えぇー……ちょっと、ナナキまで……わっ」
「――ったく、いくらなんでも考え回らなすぎだろ、お前。ま、及川は及川でめんどくせぇけどな」
「……どうせめんどくさい女だもん……」
「冗談だっつの。……で、どこ行きたい?」
そうやって苦笑いを浮かべて襟足の辺りをがしがしと掻くナナキは、やっぱり雰囲気までもが生駒くんの時と違って若干荒っぽい。けれどどうしてわたしが拗ねたのか……というより、わたしが生駒くんの言動にどんな感情を持ったかを把握している辺り、根本的には同一人物なのに察しの良さがまるで違う。
わたしは少し考えて、あえて無難な選択肢を選ぶことにした。
彼らに気付かれないよう、目を閉じて心を落ち着かせる。
「それじゃあ、街中でデートしたい」
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