人生の最後

神山 寝小

ゾンビとタイムリミット

僕らはあと5分で死ぬ。どんなに頑張ろうとも5分後にはもう詰みだ。気を緩めれば今すぐにでも死んでしまう。でもそんな簡単に諦めるほど温くはない。

現状を一言で説明するならいわゆる「バイオハザード」

僕らの周りにはゾンビ、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビただひたすらなまでにゾンビ。

それらを躊躇なく殲滅していく。

両手でしっかりと握った銃から弾丸が飛び出して、ゾンビたちの頭、手、足、胴体、いろんな場所へと当たっては肉を巻き込んで爆ぜてく。

ゾンビたちには知能がないのか決まりきった動きしかしない。それでも数が多く処理しきれなかったやつから傷を負い血が流れる。

そんな間にも死へのカウントダウンが刻々と迫ってくる、どうやら最初のほうでゾンビに噛まれたようで全てを倒さない限り死を免れることはできないようだ。正直かなりバカげた設定だとは思う。それでも後退という選択肢は無く、前進するしかない。

それに僕の隣にいる彼女が諦めずにいるのだ。そんななかで自分だけが銃を下ろすわけにはいかない。

そしてついに変化が訪れた。ずっと狭い通路だった景色がかなりひらけた広場のような場所へと移った。

そこに佇む異質なゾンビ、今までは倒してきたものと比べ10倍はある身体の大きさ、手には棍棒。直感でこれが最後の一体だとわかる。残り時間は1分弱、到底そんな時間で倒せるほど楽な敵ではない。はっきり言って詰み、それでも彼女は発砲した。僕もそれに続く。少しずつではあるが確実に効いている。敵の攻撃を避けながら時間を考慮しつつ相手の傷を増やしていく。当初は不可能と思われたのがだんだんと希望へと変わっていく。そしてそのまま倒せると思われたその時「Time over」僕と彼女は苦しみながら少しずつゾンビへと身体を変えた。


僕は「ふー」と息を吐くと手にあるモデルガンを所定の位置に戻す、彼女も戻し終えるのを確認すると床に置いた鞄をとって出口へと歩きだす。

「あともうちょっとで倒せたのにー」

彼女が不機嫌そうに愚痴を溢した。

「最後の一回って決めてたしね」

僕が返答する。

「制限時間なんて糞食らえ」

彼女がおちゃらけたように返した。

「この後どうする?」

「お腹すいた」

「ファミレスいこうか」

こうして僕らの和やかな休日デートは続いていった。

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人生の最後 神山 寝小 @N_Kamiyama

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