第1話 運命

家の中に隠れていたユリアは、もしもの時の隠し扉の有る部屋に隠れていた。ユリアは今まで小さな魔物や小動物は父親に習った、弓で狩った事はあるが人間に向かって矢を放った事は無く、弓が扱える言っても、素人に毛が生えたに近くその証拠に弓使いのスキルは覚えられてはいない。魔法も回復魔法のヒール(生命力を回復)キュア(傷、状態異常回復)しか使う事が出来なかった。


「この気配は二人組?それとも私が感じれない位離れた所にまだいるのかしら?それにこの慎重さは、あの森の奥にいた盗賊達かも知れない!」


ユリアは以前森の探索中に、洞窟を根城にしていた盗賊達を見つけていた。だがユリア一人ではどうすることも出来な00いので、その場は気配を消しながらその場を後にした。



「あの時村の村長に報告したのに、結局何も対応しなかったのね……」




ピサロとアポスは木々が開けてる場所に、家がポツンと建っている場所にたどり着いた。二人は周囲を警戒しつつ建物に近づき気配を探ると、一人の気配を感じたのだった。ユリアも気配を消すことが出来るが、流石に近くに来られては緊張で上手く気配を消すことは出来なかった。二人はハンドサインで、ピサロが入り口のドアの鍵を開け、周囲警戒をアポスが担うと合図した。


カチャ……カチャ……カチッ


ゴク……



ピサロは鍵を開けるのに成功し、生唾を飲み込んでからアポスと目を合わせ頷き、ドアをゆっくりと音を絶てずに開けだした。




(不味いわね……ドアの鍵を開けられたみたいね……もう迷ってられない!戦うしかない!……もしもの時は隠し扉から逃げれば良い)



この家は入り口を入ると居間と台所があり、居間の右側と奥に扉がある。右側の扉は両親が使っていた寝室で、今は物置のようになっている、そして奥の部屋はユリアの部屋で、現在ユリアが隠れてる場所でもある。そしてユリアは入り口入って右側の、戸棚の陰に隠れながらシュミレーションをしていた。



(男が扉を開け入って来たところを弓を射る、これで一人倒して、残りの一人は警戒しながら入ってくるでしょう。そうしたら、父さんに教えてもらった煙玉を投げて混乱させて、弓を射る。そうこれが父さんに教えてもらった狩猟のやり方何時も通りやれば大丈夫ね……)



ピサロとアポスはゆっくりと部屋入ると、中を見回し気配を探る、そして先ずは右側の扉を開け中を確認すると、やはり気配は感じず、奥の部屋の中からだけ感じるのであった。ピサロはハンドサインで自分が先に奥の部屋に入ると合図し、アポスにサポートをお願いした。



ドクン …… ドクン ドクン



ピサロは扉をゆっくりと開け、顔を覗き入れてから体全部で部屋の中入った時。誰の心音か分からないが、静かな部屋に木霊したように聞こえた。その時「シュッ」とピサロの頭に向かって一つの矢が飛んでいった。


「良し!」


ユリアは確実に当たると思い声を出してしまった。


「そこかぁ!」


ピサロは右側から飛んで来る矢を、ギリギリ顔を左にそらして交わすと、右手を左の脇下辺りにある、革のベルトに挿した投げナイフを掴み声のした方に投げた。


「きゃっ~」


ユリアは油断して投げナイフを、右肩に受けてしまった。そしてユリアは即決断し、煙玉二個を男に投げつけ煙幕を作り出した。


「うわっ!なんだこれは……ゲホッ……ゲホ……くそ何も見えねぇぞ!」


煙はピサロを包みそして、居間で待機していたアポスをも煙に包んだ。


「ゲホッ!ピサロなんだこれは!」




ユリアは作戦を変更して、背中の後ろの隠し扉を開き、森の奥に走って逃げ出した。


「不味いわ……ハァハ……しかもこのナイフ毒が塗られてるわね……」


ユリアは森の奥まで逃げてきていた。そこで後ろを振り返り家の方を気配を探り、追いかけてきて無いこと確認してから、肩に刺さったナイフを抜いた。


「くぅっ」


ユリアはナイフを抜くと、魔力を集中し傷口に傷と状態異常回復の魔法の「キュア」を唱えてから、回復魔法の「ヒール」も唱えて損傷を回復した。



「ふぅ~これで傷は大丈夫よね……これからどうしようかしら」


ユリアは傷を直した事で緊張の糸が緩んでしまった。そこに「プシュ」と吹き矢が背中側に刺さった。




「くっ……え……なぜ……気配は……こんなのまた……かい……」


ユリアはまた回復魔法で直そうと思ったが、声が上手く出せなかった。


「くくっ……声出せないだろ?その吹き矢には痺れの毒が塗り込んでおいたのさ」


ユリアの後ろからニタニタしながら、ピサロが声を掛けてきた。その後ろに同じくニタニタしたアポスが立っていた。


「流石ピサロだな?最初のナイフの毒もただの毒ではなくて、幻覚作用のある毒も塗り込んでいたんだからな」



そう先程ユリアがした気配を察知した時は、既に幻覚作用が起きていて、正確には気配を察知する事は出来ていなかったのだ。


「まあな俺は用心深いからな、なんせ俺は剣術は普通以下だからな、生き延びるには知恵と工夫が斥候に役立つのさ」



ユリアは毒が痺れのが全身に回るのを感じながら、二人の会話を聞くしかなかった。


(油断したわ……痺れの回復薬は腰のポーチに入っているけど、ここまで早く体の自由を奪う強力な痺れの毒だなんて……)



「おいピサロ!」


「ああ!」


二人の男はユリアに近づき、腰のポーチを外し、弓と矢筒を放り投げた。ユリアはこのあと自分がされる運命を自覚した。


「い……や……やめ……」


二人はユリアの涙を流して、悲願する顔を見ると更に下据えた顔になり、白地のブラウスを引きちぎり下着を露わにした。


「あはははっいいね。良い体してるじゃねぇかよ!」


ピサロは喜び興奮していた。そしてアポスも同じく興奮し、既に下半身をいきり立たせて、今にも襲おうとしていた。


「おい!アポス最初は俺からだぜ!その後にやらせてやるからな?」


「ちっ!仕方ねぇな!さっさっとやっちまえよ!」



ユリアは泣きながら、心の中で嘆いていた。こんな時母さんのように無詠唱で魔法を使えてればと、ユリアの母親は過去にも現在でも、希少な無詠唱魔法を使いこなす魔術師だったのだ。ユリアは何度も練習をしたが無詠唱は使えなかった。


(くそ!こんな奴らに辱めを受けるなんて嫌よ!何で私がこんな目に……私も母さんのような魔術師だったなら……こんな奴らに負けはしなかったのに!でも私には無詠唱は使えない。あんなに練習したのに、母さんはイメージを具体的にしなさいと、言っていたけど私には出来なかった……)




そしてユリアの家から離れた森の奥から、一人の女性の呻き声と助けを呼ぶ声が木霊したが、二人の男以外は誰一人も聞こえて居なかった。


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