復讐の回復術士～邪龍と対なる者～

プロローグ

ここは辺境の村イース、その近くの森の中でユリアは両親と人知れず仲良く暮らしていたが。両親はユリアが八歳の時今から十年前に何者かに殺害された。その後一人で森の中で暮らしていた。

そんなある日、ユリアが何時もの日課の家から少し離れた畑で、野菜の世話をしていた時森の中から、数人の人の気配を感じた。

「本当にここに居るんだろうな？」

「ああ間違いねぇ！俺は確かに見たぜ」

ユリアは森の中で長年暮らしていたので、気配を察知するのが得意であった。そしてユリアは気配を消す事も学んでおり、気配を消したまま家に向い隠れることにした。

「大丈夫……みつかりはしない！だってここは母さんの結界が有るんだから」

母さんの結界とは、ユリアの母親が書いた結界の事である。この結界は姿形を光の屈折で、そこには森の木々が埋め尽くして、先には進めないように見せていた。だがこの結界には臭いや音は隠すことが出来ない。なのでユリアは家の中に隠れたのだ、家の外壁は苔で隠されているので、土と森の植物の匂いでカムフラージュ出来ていた。

「おい！まだかよ？」

「っく……おっかしぃな？たしかこの辺だったはずなんだけどな」

男達の声が近づいてきていた。男達は明らかに何かを探していたその時、一人の男が何かを見つけた。

「あったぜこれだ」

この男達は、此処より少し離れた場所を根城にしている、盗賊団の二人であった。この一人の男が偶々何時もと違う森を索敵をしていた時に、結界の外に出て薬草を採取していたユリアを見つけ、後をつけユリアが消えた場所に目印を付けていた。

「へ～これがそうなのか？それでどっち行けばいいんだよ」

このもう一人の男は、見つけた男がこの男に賭け事の負け分の借金があり、美味しい思いをさせてやるって事で、借金をチャラにさせることにしたのだ。

「ああ……この目印から少し北で消えたから、おそらくこの先で間違いないはず……」

二人は頷き森の北に歩きだした、そこは何も変哲もない森が続いているかと思っていたが、暫く歩くと何か異様な感覚を感じた。

「おい！本当にこの先で合ってるんだろうな？……何かヤバそうな雰囲気だぞ？」

「ああ確かに……何時もならこんな感覚を感じたら、深追いせず引き返すのが基本だけど……今回はあの女が進んだのを見てるから大丈夫だろう、それとも何か？お前は怖じ気づいて引き返すか？それなら俺だけ良い思いしてくるぜ！」

そう言いユリアを見つけた男は一人で先に進む。

「ちょっ……まてよ！俺も行くに決まってんだろ！お前はこれで俺からの借金をチャラにするんだろ？お前だけ言い思いは差せねえぞ！」

男は先を行く相棒を追いかけると、なんと目の前で姿が歪み消えたのだった。驚いた男は相棒の名前を叫んだ。

「おいピサロ！」

「何だよ！大声を出すなよ見つかるだろう？」

ピサロと呼ばれた男は、姿は見えないが声だけが前方から聞こえた。

「どこだ？姿がみえないぞ……」

「何を言ってるんだアポス？ほら俺はここに居るぜ」

目の前に空間の歪みと共に、ピサロは姿を見せた。

「うおっ！ビックリしたぞ！いきなり消えたと思ったら……今度は目の前に現れた！」

アポスの驚いた顔を見たピサロは、コイツは何を言ってるんだと不思議そうな顔をしていた。

「はぁ？」

「いや、お前も見れば驚くはずだ！今度は俺が先に行くからお前は此処で見てろよ！」

今度はアポスが先に進むと、空間が歪んだと思ったら目の前でアポスが消えた。それでピサロはアポスの言った意味が分かった。

「そうかこれは幻覚の魔法の一種なのか？」

「なるほど……」

アポスはピサロの前に戻り、二人は確信する。そう此処に幻覚の魔法を掛けてると言う事は、この先にあの女が居る家があるんだと。

「よし！じゃあ周りを警戒しながら進むとするか」

「そうだな。他に人が居るかもしれないしな！」

「それと魔物もな！」

「ああ……それもだな」