死にたがりとサーカス
第20話 寄ってらっしゃい見てらっしゃい
レディースエンドジェントルマン!
さあさあ、お待たせいたしました。此度ご覧に入れますは本日初公開! いやはや皆様、大変に幸運でいらっしゃる!
これまでの演目、いかがだったでございましょうか。
異形の歌姫? 見上げるような巨人のバトル? 魔獣使いもございました。はい、息を呑むようなナイフ捌き、あれは見事な物でございましょう。
しかし、しかし! これからお見せいたしますは、今までとは一線を
えー、突然ですが、皆様は夢をお持ちでしょうかな?
そうです。様々な物を思い浮かべられましたでしょうか。
巨万の富? ええ、ええ。ほう! 世界平和! 素晴らしい! 意中の方と結ばれること。ロマンチックですなあ。わたくし大好きです、そういうの。
ええ、ですが! そういった皆様の素敵な願いと並ぶように、古代より連綿と、時の権力者から下々の民草に至るまで、全員が一度は夢想したことがあるでしょう人類の夢がございます。
そう! 不死身!
この度お見せいたしますは不死身の男!
穴が開こうが、首が飛ぼうが笑って済ます。そんな男がこの世に存在するのでございます。
そんな者、いるはずがない。嘘に決まっている。
はっはー、なるほど。もちろんそれはごもっともにございます。
ですが! ですがですがですが、皆様。皆様はご存じのはずです。
そう、ここに来られるような物好きな皆様。
――おっと失礼。
世界にドラゴンはいないのか! いいやおります。
時速六百キロを超える乗り物は無いのか! いいえ、ございます。
あ、今日はそちらでお越しですか。ええ、速かったでしょう。私にも追いつけるかどうか。
ドラゴンに乗ってこられた方は? はあ、なるほど。私だけ。
――もちろん冗談にございます。笑うところですよ。
横道に逸れましたね。仕切り直し仕切り直し。
これから始まりますは、そんな不死身の男の晴れ舞台。
よい子も悪い子も寄っといで。目を見開いて、義眼の方はようく磨いて。
それでは皆様、とくと、ご覧あれ。
「死にたがりとサーカス」開演でございます。
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