9.真っ直ぐな空
「うっ......朝か?」
眩しい。
朝の光だろう。
俺は寝起きで、重たい体を起こす。
かなりの時間眠っていたらしく、頭がズキズキしている。
「さてと.....」
俺はいつも通りの生活を送る。
軽く朝食をとる。
今日は食パンと焼いたベーコンと卵。
最近はきちんと、料理もするようにしている。
その後は掃除だ。
掃除は朝にするに越した事はない。
これは俺の持論だ。
初めにトイレと風呂場、そのままキッチンとリビング。
そして最後にベッドの上だ。
「ん?なんだこれ、タヌキ?」
ベッドの裏に入っていたのは、少しホコリかぶったタヌキのぬいぐるみだった。
タヌキなんて趣味ないんだけどな。
そう思いながら、そのぬいぐるみを手に取る。
ふかふかで暖かい。
そして俺はぬいぐるみが持つ形で、
挟まれていた紙を見つけた。
取ってみると四つ折りになっている。
「んだよ......どれどれ......」
そこに書かれていたのは、中学生らしい字だった。
何も失っていないよ。
あの真っ直ぐな空が知ってる。
「なんだこれ......」
でも、不思議と悪い気はしなかった。
なんだか懐かしい。
「そうだ。俺は何も失った事は無い。
無いんだ」
そして俺は、リビングに置かれた写真を眺める。
俺と色雨。
最初で最後の写真。
写真の中の俺たちは本当に楽しそうで、笑顔で。
「色雨、俺は今日も......あ!」
おもむろにさっきの紙を
小さい頃の記憶に任せて、ある形に作っていく。
......よし出来た。
紙飛行機。
小さい頃よく作ったなと思いながら。
そして俺は窓を開ける。
目の前に広がる雲ひとつない空。
朝の爽やかな風が、部屋全体に吹き込んだ。
「よし!」
裸足のままベランダに駆け出す。
眩しさに目がくらむが
俺は手に力を入れる。
そして、目一杯に投げた。
真っ直ぐな空に向かって。
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