第5話ママチャリ4
休憩を終えて走り出してから1時間ちょっと遂に街が見てくる場所までやってきた。
「見えてきました。あそこが私の父が治める街ミュンデンです」
「おお、すっごい壁だな。ん……なんだろ、凄い数の人があの壁の近くに集まってるんだけど?」
走太はまた人の気配を感じて後ろに乗っているカレンに祭りでもあるのかと聞こうとするが……
「えっ?まだそれなりに距離が……まさか……!ソウタ様大体の人数などわかりますか?!」
街の壁……城壁がかろうじて見えてきた辺りで人など全く見えないが走太の言葉に酷く心当たりがあるために疑うことはなかった。むしろこの後のことを考えると嫌な予感がしてしょうがない。
「えーと。大体100いや300人はいるんじゃないかな……それに殺気……みたいなものも感じるね。んっとこれって多分……」
走太も察しが付いてきたこれは、恐らくいや間違いなくカレンを探すもしくは助けるために集められた人たちであることを。
「ソ、ソウタ様申し訳ありませんがもっと急げませんか?!このままだと更にことが大きくなるかもしれません、いえ父ならやらかしかねません!」
「う、うんわかった!スピード上げるからしっかり捕まって!」
そして走太は立ち上がりペダルに今まで以上に力一杯こぎ始める。
立ちこぎによって今まで以上のスピードにカレンは驚くがそれ以上に走太が驚く。
久し振りにママチャリに乗ったけど二人乗りでこんなに速度でるのか?! スピードメーターで測ってるわけじゃないけど体感で30キロは超えてるぞ?!
爆走すること10分小さな丘を越え町の門が見えてくる。
そしてそこには走太が言った通り数にして300人ほどの人が集っていた。そこにいるのはいかにも同じ様な格好をした兵士が半数。バラバラな装備だがいかにも戦いを生業にしてますって様な方々とカレンと似たような恰好をした人達が残りを占めていた。
「やっぱり……まさか冒険者ギルドまで巻き込んでいるとはいくらなんでも大袈裟すぎます!父は一体なにを考えているのですか!」
「あっやっぱりそうなんだ。じゃあ、あれはカレンを探すために集まられた人ちなんだ」
「ほぼ間違いなくそうだと思います。父は少しなんというか心配性なもので……」
まあ、自分の娘の身になにかあったとしたらじっとはしてられないのは分かるけども。流石にこれはやりすぎじゃないかな。きっとそれだけ大事にされているってことなんだろうけど……
「まあその、これからどうする?このまま向かえばいいの?」
「いえ、流石に目立ちすぎますので一旦近くで降りてあるい……っ!少し右側に向かってください。そうです、その先にいる何か偉そうな服を着ている人に向かって全力で進んでください!そのまま吹き飛ばしてもかまいません!一刻も早く父の暴走をとめなくてわ!!」
「えっ今目立つからって、それにそんなことしたら僕が責任を……」
「早く!!」
「Yes,ma`am!」
今のカレンには逆らってはいけないと本能が警告するので指示通り大人しく爆走する。
猛スピードで人ごみに向かって進めば否応にも目立つが何事だと周りが近くの人々が騒ぎ始めるがカレンが乗っている事に気が付くと別の意味で騒がしくなる。
これだけ騒ぎになればそれを指示しているであろう者が気づかないはずがない。
「カレン!カレンなのか!よかった無事に帰ってきてくれたのだブフォァ!?」
最高速度を維持したままカレンのお父さんに突っ込む。かなり派手に吹き飛んでいったが無事なのだろうか、もしだめなら仕方がないってことでいいか。
転生初日にして早くを二人の尊い命を奪ってしまうとは……なんて残酷な世界なんだ。
「あ、あのソウタ様?いくらなんでもこれはやり過ぎではないかと……いえ、確かに私が指示しましたがあまりのも遠慮が……一応相手はここの領主ですよ?」
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