第4話ママチャリ3

「あ、あの。この度は危ない所を助けて頂きありがとございました……私カレン・マ・ルーラマッツと申します。カレンと気軽にお呼びくださいまし」


 自転車を止めてから少し経った頃やっと落ち通てきたカレンはお礼を言う。


 最初はフルネーム……この世界では間に一文字入る人々は例外なく貴族階級の者となる。


 もし自分が貴族だと知られるとまた、いらぬ問題を起こすのでは考えたが、相手は本当に危ない所を命を懸けて助けてくれた人それに対し嘘をつき騙すような事をしていいとは考えなかった。



 名乗りはしたものの……今の私の格好では信じて貰えるか少し怪しいですね……それでも、この方は私の命の恩人! す、少し危ない目にはあいましたが、あの状況下で私の危険を冒してまで助けてくれてのです。ここで不誠実な対応をしてしまってはルーラマッツ家の恥! 


「あ、はい。僕は新上走太と申します。貴族の方とはつゆ知らず無礼を致しました」

「えっ、いえ、そんなことはありませんわ。それにそんな固い言葉をお使いにならなくても大丈夫ですよ。えーと、ソウタ様とお呼びしても?それにソウタ様は私の命の恩人なのです。改めてお礼を、本当にありがとうございました。このお礼は必ず……」


 先程までの態度から想像もできない言葉に驚きを隠しきれなかった。と、同時にカレンはソウタという人物が気になってしまう。


 そんなことは全く知る由もない走太は静かに焦っていた。


 やっぱりこの子貴族様だったのか。格好はともかくとしてこの世界の生活水準は知らないけど、普通の一般人がここまで手入れが行き届くとはおもってなかったしな。てか、僕かなりこの子に無茶してたけど後で罰せられたりしないよな……?


 ここにきて自分がしてきたことを思い返してみるとこの短い間でかなり危険な真似をしたなーと反省する(ロープを切るときのことは欠片も思ってない)。


「?」


 走太があれこれ考えているとカレンがきょとんとして表情でこちらをみていた。


相手は小さい女の子ととはいえ貴族様だ。地球なら部長や社長いやこの世界の貴族には独自の裁判権がある、それこそ一発で物理的に首が飛びかねない。


それを神様が貰った知識の中にあったので走太が知る限り最大限の言葉を使い下手なミスをする前に逃げようかなと模索していた。が、予想以上に相手が恩を感じているのか考え過ぎなんだなと、改めてこの世界の常識を考えさせられた。


 ま、大丈夫か。この子、カレンがいいって言ってるんだし、もし問題になっても逃げればいいだけだもんな。


「それはできま、いや、うんわかった。お礼は受け取るよ。それに今回は偶然助ける形になっただけだからあんまり気にしないで。それに、かなり賭けみたいなものだったしね」

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