第3話ママチャリ2
少女を守りながら男たちの包囲を全力疾走で抜け出すことに成功した走太は必死にママチャリをこぎ続けたがとうとう体力が底をつきようとしていた。あれから約1時間は全力で逃げていたために息は途切れ途切れになり足も既に限界を迎えていた。
「はあ、はあここまで逃げてくれば一先ず安心かな。もう、大丈夫だよ、あっ」
背後を見て追手がないことを確認した走太がずっと少女の口にロープが噛まされたままだったことに気づく。
慌ててロープを外そうとするが思った以上に固く結ばれておりなかなか上手くいかない。
「ちょっと、これは固く縛り過ぎじゃないかな」
そんなことをぼやきながら頑張ってはみるがどうもうまくいかない。
「んー、流石にこのまま街まで連れて行くのはまずいよな……」
どうしたものかと考えるが今の自分の力では到底無理。なら、と収納を使いロープを切ることができそうな物と曖昧なイメージで探ってみると都合がいいことに
「おっ、これなら切れそうだな。てかなんでこんな物が入ってるんだよ?日本なら銃刀法違反で一発御用だな。今はいいか、先にこの子のロープを切らないと」
手に持っているナイフを向けると少女の顔が一気に不安な表情になるが走太は気にせずロープを切る。日本にいたときにここまでしっかりしたナイフなど使った経験がなかった為か一瞬手が滑りその綺麗な顔を切りつけそうになったのは仕方がないと自己完結しロープを切ることに専念する。
「よっと、ふうなんとか切れたな。このナイフ別に神様チートじゃないのかただこの世界のロープが丈夫なのかえらい時間かかったな。大丈夫かい君?」
「私、生きてます……本当に死ぬかと思いました……」
なんとか苦戦しながらもロープを切ることに成功したが少女の顔は色は優れないままだった。
やっぱり誘拐されて危ない目に合ったばかりだからかまだ上手く状況を理解できなくて気が動転してるのかな?
走太は知らない。この少女がここまで怯えているのは訳も分からない乗り物?に無理やり乗せられたうえ、矢や魔法が飛び交う中を進み挙句馬よりも早いのに支えとなるのもが目の前にいる男一人。更にいきなり口物に磨きこまれ、切る事に特化した鋭利な刃物(地球産ナイフ)を向けられ。あまつさえ、首や頬をその刃物が掠める。誘拐されたことも勿論あるがそれ以上に今起こった事の方が少女にとってショックで仕方ない。
そんなことを欠片も思ってない走太はそのうてち落ち着くだろうと一人地面に座り込み休憩を取る。
「あ、あの。この度は危ない所を助けて頂きありがとございました……私カレン・マ・ルーラマッツと申します。カレンと気軽にお呼びくださいまし」
自転車を止めてから少し経った頃やっと落ち通てきたカレンはお礼を言う。
最初はフルネーム……この世界では間に一文字入る人々は例外なく貴族階級の者となる。
もし自分が貴族だと知られるとまた、いらぬ問題を起こすのでは考えたが、相手は本当に危ない所を命を懸けて助けてくれた人それに対し嘘をつき騙すような事をしていいとは考えなかった。
名乗りはしたものの……今の私の格好では信じて貰えるか少し怪しいですね……それでも、この方は私の命の恩人! す、少し危ない目にはあいましたが、あの状況下で私の危険を冒してまで助けてくれてのです。ここで不誠実な対応をしてしまってはルーラマッツ家の恥!
「あ、はい。僕は新上走太と申します。貴族の方とはつゆ知らず無礼を致しました」
「えっ、いえ、そんなことはありませんわ。それにそんな固い言葉をお使いにならなくても大丈夫ですよ。えーと、ソウタ様とお呼びしても?それにソウタ様は私の命の恩人なのです。改めてお礼を、本当にありがとうございました。このお礼は必ず……」
先程までの態度から想像もできない言葉に驚きを隠しきれなかった。と、同時にカレンはソウタという人物が気になってしまう。
そんなことは全く知る由もない走太は静かに焦っていた。
やっぱりこの子貴族様だったのか。格好はともかくとしてこの世界の生活水準は知らないけど、普通の一般人がここまで手入れが行き届くとはおもってなかったしな。てか、僕かなりこの子に無茶してたけど後で罰せられたりしないよな……?
ここにきて自分がしてきたことを思い返してみるとこの短い間でかなり危険な真似をしたなーと反省する(ロープを切るときのことは欠片も思ってない)。
「?」
走太があれこれ考えているとカレンがきょとんとして表情でこちらをみていた。
相手は小さい女の子ととはいえ貴族様だ。地球なら部長や社長いやこの世界の貴族には独自の裁判権がある、それこそ一発で物理的に首が飛びかねない。
それを神様が貰った知識の中にあったので走太が知る限り最大限の言葉を使い下手なミスをする前に逃げようかなと模索していた。が、予想以上に相手が恩を感じているのか考え過ぎなんだなと、改めてこの世界の常識を考えさせられた。
ま、大丈夫か。この子、カレンがいいって言ってるんだし、もし問題になっても逃げればいいだけだもんな。
「それはできま、いや、うんわかった。お礼は受け取るよ。それに今回は偶然助ける形になっただけだからあんまり気にしないで。それに、かなり賭けみたいなものだったしね」
「それは本当に……」
運がよかったんだなーと二人で苦笑いをしながら不思議な時間が過ぎていく。
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