第27話 【生物】理系と遺伝

「そういえばあなたって生まれつきずっとその喋り方なの?」


「喋り方......自分ではあまり意識したことがないから分からんな。逆に、俺の喋り方はそんな個性的なのか?」


「なんだか妙に古風なのよね。武士の卵って言われても全然違和感ないくらいには」


「うーむ。そう言われても俺の親父はドーナツ職人だし、お袋もIT関係の仕事をしているから、どこから湧いて出たのか見当もつかない」


「あなたのお爺ちゃんやお婆ちゃん達はどうだったの?」


「お爺さんはその立ち振舞いからご近所さん達に侍と呼ばれていたらしい」


「がっつり祖父からの遺伝じゃない!でもなんで父母の世代で古風にならなくて、子の世代で古風になるのかしら」


「それはメンデルの遺伝の法則と言ってだな、遺伝子の性質が関わっているみたいだ。古風の遺伝子をa、古風でない遺伝子をAとすると、祖父と俺の持つ遺伝子はa×aで、両親の持つ遺伝子はA×aなのだろう」


「待って待って、どうしてそんな結論がすぐに出るのかしら。喋り方に影響が出ただけで遺伝子なんて決められるの?」


「ああ、古風か古風でないかしか考えなければな。まずAとaしかない遺伝子を2つ掛け合わせた組みはA×A、A×a、a×aの3通りある。しかし古風でない遺伝子Aが、一つでもあればその人が古風でなくなるという強い遺伝子すなわち優性遺伝子だと考えると、古風の話し方が発動する条件は遺伝子の組み合わせがa×aになることのみだからだ」


「なるほどねー。それならさ、もしあなたが100%現代風な女の子と結婚したら、生まれてくる子供ってもしや......」


「ああ。遺伝的にそこにいるのは、ナウい奴らだけだ」


「とてもあなたの血を継いでるとは思えないわね」


「ちなみに、血液型もこの原理と同じように決められているが、これと違って優性遺伝子がAとBの2つである複対立遺伝子で、Oだけが劣性遺伝子となっている」


「へえー、じゃあ遺伝にも色々と掛け合わせ方があるのね。そういえば私の先祖は代々、実親もその上もぜーんいん勉強教えていたみたいだわ!」


「人に物を教えたいと思う遺伝子をTとすれば、君の家系にはT×Tしかいないのだろうな」


「それ、自然の摂理的にどうなのよ」

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