負けるなユウスケこれにあり
その後、大きなトラブルもなく大会は進んで行った。黒いユニフォーム「ディープフォレスト」の三人はどの子もストレート勝ち。特にディープフォレストの紅一点にして大会唯一の女の子、セリカちゃんは強かった。
彼女は独特の構えからギアをシュートする時にコマンダーの後部を左手で強打する。
その勢いをシュートの力に上乗せされた黒いカブトムシは弾丸のように相手のギアに突き刺さり、哀れな生贄を次々とバーストさせて行った。
ユウスケも善戦していた。
彼の使う赤と金のクワガタムシ型ギア「ギラフィック・スプラリンガルド」は攻守バランスの取れた動きで、相手が攻撃型ならその突進をいなし、相手がテクニック型ならその横腹を突いてスタジアムアウトさせて行った。
結局準決勝に残った四名は、ユウスケと、ディープフォレストの三人組だった。
ユウスケは、スリーオンスリーバトルの初戦でビートルバーストを許し相手に2ポイント先取を許したものの、スタジアムアウト、アップサイドダウンでポイントを取り返し、ついに4戦目で相手からビートルバーストを奪い、決勝進出を決めた。
相手は、ディープフォレストの女エース。セリカだ。
三位決定戦を終え、残すは決勝のみ。
会場の興奮と緊張はピークに達していた。
***
「それでは、本日の玩具専門店ジャッカルのビー……トル? ビートルギア大会の決勝戦を開始します」
私も緊張してきた。
この感じだと、優勝して手に入るというレアパーツなるものは、きっとこの子達にとっては物凄いお宝であるのに違いない。
「では、使用するギアをピットに収めてください」
それぞれのサイドでユウスケとセリカが三つの個室に仕切られたピットケースにそれぞれ三機のギアを一機ずつ収めてゆく。
チラリとセリカの様子を見ると、彼女のアタッシュケースの中はギアとコマンダーの形にウレタンか何かの緩衝材に穴が開けられていて、無数のギアが整然と並んでいた。
……すげーな。暗殺者の仕事道具みたい。
一方、ユウスケの工具ケースは百均かホムセンの、子供のお小遣いで揃えたというようなケースだ。
がんばれ。ユウスケ。声に出して応援はできないが、お姉さんは君の味方だ。
痩せガエル 負けるなユウスケこれにあり
あ、これじゃ応援してるのがユウスケでされてるのはカエルか。
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