第2話
彼のことを意識したのは何時からだろう。
「え? 貴方達あんなに一緒にいるのにまだ付き合ってなかったの?」
そんな事を友達に言われてからだろう? その頃から目が合うと恥ずかしくなるのに、知らず知らずに彼を目で追っていた。
「はあ、『まだ付き合ってなかったの?』ってこっちが訊きたいよ。なんでこんな事になってんのよ」
机に顔を埋めながら小さく呟いたて足をばたつかせていた。
終業のベルが鳴り、いつもと同じように彼と一緒に帰宅する。
他愛もない話をしながら帰っていたが、私は今日こそ付き合うぞと決意をしていた。
「一度、家に帰ってから遊びに行ってもいいかな?」
よく遊びにいってるので難なく了承を得る事ができた。
彼とは別れて帰宅する。
軽くシャワーを浴びて何を着て行こうか考えた。
鏡を見てお気に入りの花柄のワンピースを体に当て着て行く服を選んでいた。
「やっぱり可愛い服がいいよね」
この服で行くことに決めた。
彼の家に到着し、気持ちを落ち着かせる様に深呼吸をしてインターホンを鳴らす。
「はーい、お、早かったな。今、部屋にいるから上がってこいよ」
家の中に入るといつもお邪魔しているのに今日はなんだか別の場所に来たみたいに感じていた。
階段を上がり彼の部屋へと向かい、ドアを開けるとベッドに腰掛けてゲームをしている彼が居た。
冷房が効いてるのか少し肌寒かった。この服装失敗しちゃったかな? そんなことを考えてた。
「今、ゲームやってるんだけど一緒にするか?」
彼がコントローラーを差し出しながら訊いてきた。
「うん、やるやる」
彼の隣に座り一緒にゲームを始めた。
あー、ダメだこのままの流れだと告白なんてできる空気にならない。
そんなことを考えてたからゲームには集中できなかった。
なんとか、流れを変えなくちゃ。
「私たちこのゲームずっとしてるよね」
「ああ、そうだな、それがどうした」
「なんか変わったルール加えない?」
「ルール、いいよそんなのめんどくさいし」
「いいから、やろ? ね? ね?」
「分かったよそこまで言うならやってやるよ。でどんなルールなんだ?」
「そうね、じゃあ、負けた方が勝った方のいうことを聞く。これでどう?」
「うーん--」
「じゃあ、それで決まりね!」
ちょっと強引だったかな。でも流れを変えなくちゃ。
ゲームの結果は見事勝利。
でもどうしよう──勝ったのはいいけどこのまま付き合ってっていう言うのもなんか違うよね。どんな事を頼もうか悩んでしまう。
どうしたら付き合えるのよ。よし決めた。
まずは相手がどう思ってるか気持ちを確認しよう。
「5分間、私が目を閉じてる間、私に何してもいいよ」
こちらの発言にびっくりしたように彼が立ち上がりこちらを見下ろす。
「じゃあ始めるよ。スタート」
ゆっくりと目を閉じタイマーをスタートさせた。
目を閉じたので当然ながら目の前は真っ暗である。
視界がシャットアウトされたせいか色々と考えてしまう。
この状況一体どうなるんだろ。
急にいやらしい事はしてこないと思うけど。抱きしめられたりキスをされたらどうしよう。
嫌ではないけどやっぱり恥ずかしい。
さっきまで肌寒かったのに少し暑くなってきた。
それにしても何もしてこない。
どうしたんだろ。
やっぱり私に興味ないのかな、そんな事を考えてるとタイマーの音がなった。
彼の顔を見るのが怖い。この後どうしよう。
そんな事を考えながらゆっくりと目を開けた。
彼の顔を見ると困った顔をしていた。
これ以上困らせたくはないと思いつつも頭に浮かんだ疑問を口にせずには居られなかった。
「どうして、どうして何もしてこないの?」
「え?どういう──」
彼が言おうとした言葉を遮り続けてしまう。
「私ってそんなに魅力ないかな?」
あれ、私泣いてるの? 自分が泣いてる事に気が付いて続く言葉が出なかった。
「1分いや後30秒だけ俺に時間をくれないか?」
今度はこっちが驚くことになったが頷いて応えた。
「あ、あの、俺はお前の事が好きだ」
そう言いながら彼が抱きしめてきた。
彼の鼓動が早くなってるのが全身を通じて伝わってきた。
「お前が目の前で泣いてるのを見て苦しくなった。今まで近過ぎて気づかなかったけど。俺お前が好きなんだ」
彼はそう言いながら抱きしめてる腕を解いたので彼の顔を見上げる。
「私もずっと好きだよ。ちゃんと気持ちを伝えてくれてありがとう」
「俺の方こそ自分の気持ちに気付かせてくれてありがとうな」
タイムリミット作戦は失敗しちゃったけど。
付き合うことには見事成功。
今度、友達に二人の事を聞かれたらどうしようと考えるとまた少し恥ずかしくなった。
でもそんな考えはすぐに消えて、目の前の彼を見ると視線が合ってしまい。
さらに恥ずかしくなり俯いてしまう。
「それにしてもこの部屋暑いなあ」
彼のそんな言葉を聞いて思わず笑い出してしまう。
「あはは、確かに暑いね。あー暑い暑い」
「やっぱり、そうだよな。あはは」
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