#393(8週目日曜日・午後・Hi2)
『 …! とにかく、今すぐ通報を止めろ!!』
早速"D"から、通報を止めさせるよう緊急メッセージが届いた。
『え? そんなの今さら無理ですよ。私たち、手伝っているだけで直接指揮しているわけじゃないし…、何より、何て言ったらいいんですか?』
『それは!?』
D曰く、K1は『秘密裏に用意しておいた(鬼畜道化師の)協力者』らしい。本当はEDのスパイなのだが…、それは流石に言えるわけも無く、幹部の私も知らないギルド関係者が突然現れる形となった。
『流石に遅すぎですよ。もう、何人か通報し終わってますから、諦めて切り捨てちゃった方がイイんじゃないですか? 下手にフォローしても、ボロが出るだけですよ~』
『そ、そういうわけには…』
ギルドから通報を止められるのは分かっていた事。だからこその脇役、だからこその遅れての登場だ。あくまで私たちは『CiNに協力しているだけ』で、ターゲットの詳しい情報は知らなかった事にする。
『つか、協力者とか居るなら、先に言ってくださいよ。ヤレって言ったり、ヤルなって言ったり。振り回される現場の身にもなってください』
『ぐっ…』
まぁ、振り回されているのはEDと私たちの板挟みにあっているDの方なんだけど…、そこは知らないフリをして強気に攻める。
そう、これは明確な反逆行為だ。表向きはギルドの方針に従って『CiNに協力して自警団を妨害している』風に装ってはいるが…、実際には『承知した上でスパイを潰している』。バレたら間違いなくクビ。いや、考えうる全ての嫌がらせをフルコースで喰らって、L&Cを続けられなくなるだろう。
『この後も何人か心当たりをまわるらしいので、まだ協力者がいるなら"リスト"を貰えませんか? 前もってわかっていたら、止められるかもしれないので…』
『ちょ、ちょっと待ってろ!!』
察するに、EDに直接指示を仰ぐために移動しているって感じだろう。多分だが、Dは最初からギルドに招き入れた
「ヒィちゃん、状況はどう?」
「ヒィちゃん言うなし。こっちは適当にやっておくから、気にしないで(K1を)キルしちゃっていいわよ」
「はぁ~ぃ」
たしかに裏切りと言えば裏切りだが…、別に私たちは鬼畜道化師商会を裏切ってはいない。私たちはあくまで、好き勝手に利用してギルドを無茶苦茶にしたEDにやり返してやっただけ。それだけの話だ。
因みに戦況は、一進一退。K1は確かに序列1位と言うだけあって私たち道化師幹部とも対等に渡り合えるだけの実力を持っていた。しかし、K1にとっては、この場の勝敗はもうどうでもよくなっているはず。なにせ、転生間近のC√PCでもないかぎり『指名手配=ゲームオーバー』なのだから。
つか、K1のすがる様な眼差しが鬱陶しい!
『待たせたな。やはり協力者のリストはわたせない』
『そうですか。まぁそうでしょうね』
EDは、私を全く信用していない。そんな相手にリストを渡したら最後、芋づる式に全員排除されてしまう。それこそ…、そのリストをセインや自警団に売り渡すと考えるだろう。
実際にはとっくにバレていて、ただ裏付けとしてリストを欲しがっているだけとも知らずに…。
『あぁ、これは個人的な私からのアドバイスなんですけど…』
『??』
『自警団って、BLのログに行動が残っちゃいますから…、そういうの詳しく調べれば、直ぐに分かっちゃいますよ』
『!!?』
それだけ言ってメッセージウインドを閉じる。
セインが何を根拠にスパイを特定したかは知らないが…、少なくともBLには情報を吸い上げて共有する機能がある。例えば、襲撃事件でCiNにゴブリン村3まで突破された状況で『殆ど交戦した形跡がない』チームが居れば、それはサボっていたか、裏切り者かの二択となる。他の検問チームと違い、K"1"がわざわざ稼ぎ時に稼がないのは不自然を通りこして異常と言えるだろう。
「さて! アンタ達、私に獲物を残しておいてくれたの? 律儀ね」
「「姐さんキタこれ! これで勝つる!!」」
「くそっ!
憂鬱な通信を終え、私も戦闘に加わる。すでにK1はお通夜みたいな表情だが…、ここは私の憂さ晴らしと、レッドジュエルナイフの慣らしに付き合ってもらう。
「ヒィちゃん。顔が、緩んでいるわよ~」
「うっさい!! まぁ、アレよ。
「「 ………。」」
この後の展開は…、魂の抜けた相手を淡々とキルするだけの、つまらないお仕事となった。
こうして、私たちは(少なくとも)K1がEDのスパイである状況証拠を揃え、その後もターゲットを順番にキルして…、行こうとしたら、3組目でターゲットが揃ってログアウトしてしまったので、そこで打ち切りとなった。
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