#319(7週目木曜日・午後・Hi)
「ヒィちゃんおはよ~」
「うっす! ベストタイミングだったな。早速、レベリングに行きますか!」
「ヒィちゃんゆうなし。まぁ、その、おはよぅ…」
昼過ぎ、今日はLuとMeと私の3人で、技術向上を目指した狩りへと出かける。因みに、Siたちとは別行動。なぜなら、目的が『打倒セイン!』だからだ。
いや、私もいきなりセインに喧嘩売りに行くほどバカじゃないよ? ちゃんと皆に止められたし、行きません!
「そう言えば、掲示板見たか? BLオワコンだってさ」
「そうみたいね。私としては、ネクタイデカすぎが出来るようになるのが嬉しいけど」
「「??」」
狩場へ向かう道中で、早速アップデートの話題に花が咲く。
BLに関しては…、いまいち理屈は分からないが、どうもそういう事らしい。まぁ、あの手のツールはアップデートで動作が不安定になるのは、よくあること。つまりはそういう事なんだろう。PKとしては非常に有り難い情報なんだけど…、正直に言って、今はセインのことで頭がいっぱいで、どうでもよくなってしまっているのが本音だ。
「それで、なんか装備を作り直すとイイらしいんだよ!」
「そうらしいわね~。まぁ、明日になるまでお預けだけど、素材でも資金でも、用意しておいて損は無いでしょうね~」
「 ………。」
「あ、あと、デフォルト仕様の装備が安くなっているそうだから、今まで手が出なかった装備は、そっちで揃えるのも、いいかもね~」
「おぉ、なんだかワクワクするな!」
「あの!」
「「ん??」」
意を決して、2人に打ち明ける。
「その、私、型を変えようかと思って…」
「型って、戦闘スタイルの事だよな?」
「そう」
「なるほどね~。たしかにセインを相手にするなら(格下ではなく)格上向きのビルドにする必要は、あるわよね~」
そう、ハッキリ言って今の構成ではセインに歯が立たない。
魔法はレベルアップしても弾速は変化しないので、高速弾を平気で見切るようなバケモノには効かないし、私の魔法攻撃力も最低限しか上げていないので、やっぱりレベル差が開いている相手には通じない。戦術や装備で補える部分も少なからずあると思うけど…、それでもやっぱり、格下をハメ殺すような構成は、捨てないとダメだろう。
「なにか希望とかあるのか?」
「それは、その…」
「無いんかい!」
「まぁまぁ。でも、実際問題、ステータスは今更かえられないし、装備はともかく、スキルで補っている部分は直ぐには難しいわよね~」
私のステータスは、体技心をフラットに上げた失敗例のようなステータスだ。本来の魔法使いは、最低限の技を上げたら、心を極振りするものだが…、私は魔法を逃げ撃ちするために体にも振って、更に速度や詠唱を早めるパッシブスキルを多くとっている。
セインに魔法ダメージを通すには、心をもっと厚くした方が良いのは間違いない事実なんだけど、それだと味方を周囲魔法で巻き込む作戦が使えなくなる。というか、実際、あっさり返り討ちにあっちゃったし…。
「なにかこぉ、今のステータスを活かせるスタイルが、他にあればいいんだけど…」
「速度を上げるついでに、物理面も結構あげちゃってるもんね~」
結果的に器用貧乏で、なにより決定打の無い構成に仕上がってしまったが、そこは格下を相手にするなら問題は無かった。しかし、相手がセインとなると話は別だ。レベルでも、装備でも、PSでも、全てにおいて負けている。唯一勝てるとすれば"数"ってところか? それもなんか違う気がするけど。
「あ~、そういえば…」
「「??」」
「そう言えば、何て言ったっけ? 魔法で殴るヤツ、あったよな?」
「あ、あぁ…」
「バースト系ね~。ネタスキルだから、私も詳しくは知らないけど」
バースト系とは、放出しない放出魔法で…、本来は練り上げた魔法の塊を相手に向けて放つ一連の流れを省略して、練り上げた段階で直接相手に叩きこむ(設定)物理と魔法の複合攻撃だ。一応、拳闘士にも似たようなスキルはあるが、こちらは身体強化や継続魔力消費がないかわりに、反動ダメージと装備の制約がかかるのが特徴だ。
「せっかくだし、試してみるのもいいんじゃねぇか? 今なら装備も安く手に入ると思うし」
「ヒィちゃん、スキルはどうなの?」
「ヒィちゃんゆうなし。スキルレベルは上げていないけど、一応覚えてるよ」
反動ダメージは、L&Cらしいというか、自分の魔法でも巻き込まれれば自傷ダメージが入るって仕様で(バーストに直接反動ダメージが設定されているわけでは無い)攻撃がヒットすれば必然的に自分も巻き込まれてしまう欠点がある。まぁ、装備や属性防御である程度は何とかなるけど。
「それなら試してみるのはアリじゃね?」
「そうね。まぁ、防具はいいとして…、問題は武器よね~」
「だよね…」
それよりも問題なのが武器の制限だ。バーストはあくまで放出魔法なので、例えば剣の先から放つと言ったことが出来ない。よって、手か、マジックロッドなどの魔法に対応した武器限定となる。しかし、それだと物理攻撃力が伸びないので複合ダメージの恩恵がフルに受けられない。
「仲間内に詳しい奴でもいればよかったんだけど…」
「いないわね~。商会内には」
「それこそ魔法剣でも手に入ればいいんだろうけどな」
「現状では入手不可能じゃない?」
「だろうな」
一応、どちらにも対応した武器は存在している。しかし、どれも高ランクの装備なのでナンバリングがリセットされた現状では実質入手不可能。今は考えても仕方ないだろう。
「そう言えばさ…」
「「??」」
「
「え、それはその…、速度と対応力を重視して、かな?」
「ふふふふふ~」
ニヤニヤと笑みを浮かべるLuの顔が何かムカつく。
それはともかく、私はセインと一騎討をするまで、速度を重視して軽量のマジックロッドを使っていた。しかし、セイン相手には速度でも火力でも勝てずに、成すすべなく負けてしまった。
よって、夜の試合からは最低限の攻防が出来るように、初期のレベル上げで使っていた短剣を持ち出した。それ以降は、武器熟練度上げも兼ねて"なんとなく"短剣を使い続けている。
(仕様上、魔法では杖の熟練度は上がらない)
「えっと、とりあえず調べておくから、今は夜の試合に向けて、少しでもレベルを上げましょ」
「だな!」
「そうね~。基本は、やっぱり、レベルを上げて物理よね~」
「お、おぅ、そうだな」
「え、あぁ、そうね」
「う~ん、やっぱり、ジェネレーションギャップ、感じちゃうわ~」
「「??」」
Luの言うことは時々よくわからないが、とりあえず、私たちは夜の試合に向けて、黙々とレベル上げに専念した。
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