#246(5週目日曜日・夜・????)

『 …。…』

「げぇ! マジかよ!?」

「どうした?」

「自警団のコロッケが攻め込んできたってよ!」

「なんだコロッケか…」

「驚かせんなよな。Hかと思ったじゃん」


 (B)の村。そこは数多くのPKが集まっていた。このPKは、本来ならば魔人軍側からスポーンするものなのだが…、今回に限っては全て王国軍側からの出撃となり、敵味方の区別もつけられない状態となっていた。


「いや、コロッケはともかく、こっそりPTにHも居るかもよ?」

「あぁ、そりゃマズいな…、でもさ、行くなら(A)だろ?」

「だよな。つかさ、実際のとこ、自警団の戦闘部隊って…、強いの?」

「さぁ~な。ぶっちゃけ、強いイメージはないけど」

「だな」

「「ははははぁ~」」


 後半の折り返しを待たずに投入された自警団の(表の)戦力。しかし、PKたちの反応は、狼狽えるどころか楽観的にとらえる空気が殆どであった。


 彼らが恐れていたのは対人戦で無類の強さを誇ると言われるHの存在であり、(B)にコロッケが来たと言うことは、Hは(A)か(C)に行くと考えたからだ。自警団が目指すのはあくまで勝ち越しであり、最低2つ村を確保する必要がある。よって、自警団が抱える2柱を一ヶ所に纏めてしまうのは愚策。(C)の村での防衛戦は遠距離主体と言っても、最終的に防衛線は強制崩壊するので、結局対人戦が出来るPCを配置する必要がある。


『 …。…。』

「お、なんかコロッケ、頑張っているらしいぞ? もしかしたら、ここまで来るかも」

「マジか。俺たち、掘られちゃうじゃん!?」

「いや、ビーストじゃないから」

「ハハハ、それじゃあ、後ろの貞操を守るためにも、ちょっとは頑張らないとな」

「ここまでノーデスだったからな。これで退屈しないで済みそうだ」


 味方の連絡から、コロッケが勝ち進んでいる事を知ってもなお、楽観視するムードは抜けない。なぜなら、コロッケは「噛ませ犬、いつも負けている」イメージが強く、実力に反して軽視される傾向が強いからだ。


 コロッケは6時代のLルートランカーであり、決して弱くは無い。たしかに対人戦には不向きな(振りの遅い)両手剣を愛用していることや、PT戦主体のスタイルは乱戦になりやすい対人戦ではマイナス評価だ。しかし、それでも彼が10万人規模のゲームでベスト200に入ったのは事実であり、単純計算で500人中トップの実力を持っている。そんなプレイヤーが弱いわけがないのだが…、心理とは不思議なもので(対人特化の自分たちなら)「コロッケくらいになら勝てる」と思えてしまう。


『 …。…。』

「げっ!? マジかよ!!」

「どうしたん?」

「自警団の野郎、スタート地点に検問をはって、リスキル(再出撃狩り)はじめやがった!」

「うわ、そこまでする?」

「リスキルはマジで勘弁。デスペナ祭りでアバターが使いものにならなくなるやん」


 PKが王国軍側として出撃するリスクは、NPCの敵対だけではない。もっとも危険なのが再出撃リスポーン狩りだ。完全に面が割れたPKは、出撃するたびに即座にキルされ、永遠とデスペナルティーを払い続けることとなる。


「「 ………。」」

「ま、いっか」

「だな。キルされたら帰るべ」

「リスキルされてまで、つくす義理ないしな」


 イベント中に該当エリアで死亡すると、対応したイベント用のスポーンエリアか、個々が登録しているセーブポイントにスポーンするかが選べる。つまり、自警団が張り込んでいるスポーンエリアにスポーンしなければいいのだ。もちろん、それはイベントを放棄すると同義だが…、もとより彼らはPKであり王国軍側のPCだ。最後まで奮闘して魔人側に勝たせたところで、王国軍側の侵攻部隊として参加している彼らには何の報酬も発生しない。


「そそ、最低限のキルは稼いだし、あとはEDの連中にまかせるべ」

「でも、なんかEDの1軍の集まり、悪いらしいぞ?」

「そんなん知るか。EDが活躍しようが返り討ちにされようが、俺の知った事じゃねぇし」


 彼らはEDの呼びかけで集まったフリーのPKだ。一応、掲示板などでPK同士の繋がりを持ってはいるものの、プレイスタイルはあくまでカジュアルであり、EDや同盟に対する義理や、PKとしての信念などは持ち合わせていない。


 今回呼びかけに集まったのは、あくまでルート値稼ぎであり、元勇者がイベント時にPK行為…、つまりは「魔人にくみする行為をおこなったPCを罰しない」と明言しているからだ。そうでなければ指名手配システムを超越してしまうBLが存在する現状で、目立つ場所で堂々とPKをおこなったりはしない。


「とは言え…」

「やるだけはやりますけどね?」

「そそ、PKってのはバカ正直に向かっていくばかりじゃない。相手が強くとも、いくらでもやりようはある」


 PKには様々なアプローチがある。地形を利用した奇襲や、一般PCを装う偽装、そして魔物を利用する挟撃。彼らは決してランキングに名を連ねるほどのプレイヤーでは無いが、しかし、自分たちの得意分野でなら「下位のランカーくらいなら倒せる」くらいの自信はもっていた。


「それじゃあ、作戦はどうする? 一応、警戒して損は無い相手だと思うけど…」

「それはもろちn、じゃなかった、もちろん! 欲張りセット全部のせコースで!!」

「よし、そうと決まれば下準備だ! 時間がない、急ぐぞ!!」

「「おう!!」」




 戦いに赴く動機や意気込みは人それぞれ。アニメやマンガと違い、現実では大きな志や大切な誰かのために戦えば勝てるなんてことは無い。単純に力や戦略で相手を凌駕した方が勝つ。そこに善悪の要素は無く、あるとすれば個々を鼓舞する程度の意味しかない。


 コロッケと呼ばれるPCにどれほどの志があるかは計りかねるが…、勝つのはあくまで「強い方」…、なのであろう。

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